〜命をいただく〜エコキッチン

 

2023年夏号あるものすべてに活かし、
使い切る。

本年度のエコキッチン、その厨房から季節のレシピを届けてくださるのは新潟県南魚沼の大沢山温泉にある「里山十帖」の桑木野恵子シェフ。厳しい雪国、その土地ゆえに継承してきた美味しさ、季節が創り上げる美しい景色を一年、さらに数年という時間サイクルで見守り、実在感のある料理を提供する『早苗饗』。テーブルを飾るすべての食材は、シェフ自らが山に入って採集した山菜やキノコ類、近隣の農家から持ち込まれる野菜、新潟県産の海産物や畜産物で賄われています。
今日、ここに生きることをひたすら感謝し、地球からの贈り物をしっかり食べきる食卓の姿、その景色と味をお届けします。

ナビゲーター | 桑木野恵子

里山十帖シェフ | フードディレクター

1980年埼玉県生まれ。武蔵大学人文科学比較文学科卒業後、都内のエステサロン勤務。その後海外へ。オーストラリア、ドイツ、インド等を巡り、ヨガと各国のベジタリアン料理を学ぶ。帰国後、都内のヴィーガンレストラン勤務後、自遊人へ入社。温泉(共同浴場)と山歩きを日課に、地域のおじいちゃんおばあちゃんと交流し、地に根付く食文化・風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、ローカルガストロノミーを料理で表現。2018年、「里山十帖」料理長に就任、2020年「ミシュランガイド新潟2020 特別版」で一ツ星を獲得。2022年には「ゴ・エ・ミヨ2022」で15.5点とテロワール賞を獲得。

「エコピープル」でのインタビュー記事 ≫

第一回里山の暮らし

雪国の冬は長い。
毎年12月頃には雪が降り始め、4月まで山には雪が残っています。 私の住む魚沼では、長い冬を越すための保存食が、先人の知恵として、今でも受け継がれています。

ここに移り住んだ当初、雪国の食文化や山菜の知識がまったくなかった私は、地元の方の真冬の食卓に、たくさんの春の山菜、夏野菜、秋のキノコ、木の実が並んでいるのを見て、衝撃を受けたことを今でもはっきりと覚えています。









雪国では、冬が終わったその日から、来年の冬の準備を始めます。一気に芽吹くそれぞれの山菜を、せっせと塩蔵や乾燥、瓶詰めにして保存していきます。雪が溶け、山に入れるようになると、まずは深山にある祠へ行き、また今年も山に入らせていただく報告と感謝、祈りを捧げます。

春は、土の下からやってきます。まず最初に蕗の薹(フキノトウ)やスイバ(酸味のあるタデ科の多年草)が顔を出し始め、つくし、よもぎと続きます。「山菜」とひと言で言っても、その種類はさまざまで、ざっと80種類程。それぞれの旬も、1週間から10日程と短いのですが、それでも雪国では雪が解けたところから順に芽吹くため、標高の高さによって、長く山菜を楽しむことができます。







6月になると、私の山菜採りもずっと山の奥へ入っていきます。山菜は新芽だけにフォーカスされ がちですが、植物には芽吹きがあり、花が咲き、実がなり、朽ちていく一生があります。

日々山に入り、それぞれの山菜の一生を観察していくことは、たくさんの発見や学びに満ちています。春の採れたての多種多様な山菜、初夏の香り高い山菜の花、秋の力強い山菜の実。多彩な山菜は、料理のバラエティーを増やす以外にも、「植物や生き物の命をいただいている」という実感を料理に吹き込んでくれるのです。














ぜんまいの胡麻酢和え

今回は初夏が旬の山菜、「ぜんまいの胡麻酢和え」レシピをご紹介します。
ぜんまいそのもの、また下処理等については、ぜひ食材ラボをご覧ください!
(※桑木野さんのレシピでは材料に山ぐるみを使っていますが、手に入らない場合は、胡麻やピーナツなどで代替できます。)






















ぜんまいの胡麻酢和え

材料(4人前)
【胡麻酢】
山ぐるみ(秋に採ったもの)
200g
醤油
40cc

40cc
砂糖
大さじ1
【ぜんまい煮】
戻したぜんまい
350g
食材ラボ参照のこと
身欠きにしん
2本
煮干し出汁
2カップ
醤油
大さじ3

大さじ2

小さじ1/2
みりん
大さじ3
作り方
  • 山ぐるみを遠火で炒る 。
  • 炒った山ぐるみを、すり鉢でペースト状になるまでよく擦る。
  • すり鉢にすべての調味料を入れて、よく擦って完成。
  • 身欠きにしんを一口サイズに切って、米の研ぎ汁で茹でこぼしておく。
  • 鍋に出汁とぜんまいを入れて、沸騰したらみりんと酒、身欠きにしんを加え、落とし蓋をして2-3分煮る。
  • 塩、醤油を入れて、さらに2-3分煮たら火を止めて、そのまま一晩おいて味をしみ込ませる。
  • ぜんまいの水気を切ったら、胡麻酢とざっくり合わせて完成。