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写真:ノマドの世紀に:vol.2 なぜ写真を撮らなかったのだろうか?(沖縄)

見出し:月が昇り、とてもとても静かな夜だった。

なぜ写真を撮らなかったのだろうか?

いや撮れなかったんだ、きっと。
モンゴルの深夜。
煌煌とした月夜。

あれは同じような静かな月夜だった。
そのとき僕たちは下地島にいた。
沖縄の伊良部島のとなりにある小島。
僕はパイロット訓練生たちと飛行機に乗って
タッチアンドゴーの練習をしていた。
珊瑚礁に囲まれた綺麗な島に何度も何度も離着陸する。
怖くなんかない。
僕は何度も深い空と深い海に吸い込まれる気分を味わった。
グーグルアースが出た時に最初にPC内の空を飛んでみて感じたのは
あのときの下地島の青い空と青い海だ。

訓練が終わり夜になると、僕たちは村に出て
仲良くなった島のおばさんの店で泡盛を飲み
それから港まで行って誰かが弾く三線で唄を歌った。

テトラポッドがたくさんあって
その下を覗くと暗い海の中に小さく光るものがある
よく見ると無数にある。
イセエビだよ、と島の人は教えてくれた。
「とってみるかい?」

次の日もこっそり基地を抜け出した僕らは
テトラポッドの浜辺に向かい
イセエビに糸を垂れる。
なかなかかからない。でも僕たちはずっと待った。
イセエビの目が闇の中で銀色に光る。

月が昇り、とてもとても静かな夜だった。
油を敷いたような暗くて神秘的な海が鏡になる瞬間、
モノトーンの息を飲む美しさ。

〜月の美しゃ十日三日
〜童び美しゃ十七つ

月が美しいというそれはそれは綺麗な唄
「月ぬ美しゃ」。
沖縄民謡で僕が一番好きな唄だ。

〜沖縄、八重山照らしょうり
〜ほーいーちょうが。