~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2023年夏号 Ecopeople 96

コラム

これからの社会における“自然観察”の価値
自然のちから推進部
 広報チームリーダー
後藤 なな GOTO Nana


現在、日本自然保護協会では日本の自然保護をさらに一歩進めるために、自然観察指導員の皆さんと叶えたいイメージを「2030ビジョン」として掲げ、活動しています。2021年の内閣府の世論調査によると、残念な結果ですが、自然に非常に関心があると答えたのは全体で29.2 %、10代から20代の若い世代では18.2%という数字が出ました。これは、ライフスタイルの変化とともに、自然とふれあう機会が減少し、自然に愛着をもつ層が減っているのではと危惧します。自然を守るためには、まずは自然に興味関心をもってもらうことがとても大切だと考えます。片や、日本は近未来において、大幅な人材不足が予想されています。全国での自然保護活動を将来にわたり安定的に進めるためには、これまで退職されたボランティアに頼りがちだった活動を、あらゆる世代の方とともに持続的な形にしていく必要があります。当協会の活動を支える全国の自然観察指導員の皆さんとともに現在進めている「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」も、「2030ビジョン」を実現するための計画のひとつ。一般的な自然観察会に参加しづらい境遇にある子どもたちを含め、すべての子どもに自然の原体験を届けることは、自然と共に生きる暮らしの大切さを実感できる素地を創り上げることにつながると感じています。
2020年のコロナパンデミックでの移動制限や隔離生活は誰にとっても辛い経験でしたが、日常の場所に存在する身近な自然とのふれあいを大切にするライフスタイルに気付き、日々の暮らしの中での自然観察の楽しさを実感したという声もありました。この傾向は自然への愛着・関心の高まりとして、確かな手応えを感じています。
働き方も暮らしのマナーも大きく変わった現在、インターネットを活用するなど、組織に所属することなく、私たちの自然保護の活動にもぜひ参加して欲しいと願っています。


*自然観察指導員養成計画2030~自然保護教育の効果をより広く深く社会に発揮していく11年~
*すべてのこどもに自然を!プロジェクト
*内閣府政府広報室「生物多様性に関する世論調査」の概要

今日から始める自然観察「どんぐり検索表」
(クリックするとPDFがダウンロードできます)

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自然観察指導員について
保護・教育部主任
浅岡 永理 ASAOKA Eri


「自然観察指導員」の合言葉は、「自然観察からはじまる自然保護」です。これまでに全国で3万人以上の方が講習会を受講し、現在は約8,000人の方々が継続登録されています。それぞれの地域に根ざした自然観察会を開き、自然を守るための仲間をつくるボランティアリーダーとして活動してくださっています。こうした指導員の方々によって、年間で延べ130万人の方々に自然観察の機会を提供できています。
自然観察指導員になるための講習会は、各地で2日間の日程で定期的に開催しています。講師と協会スタッフの指導の下で、野外実習と講義の2本立てのプログラムで実施しています。自然観察指導員になる上で重要な「自然観察の視点」、「自然の保護」、「自然観察のテーマの探し方」をベースに、自然観察会の企画と開催のポイントを学んでいただきます。
指導員として求められる力は、自然のしくみ、生き物同士のつながり、人との関わりなどを踏まえて、自然を正しく理解し、伝えるために必要な「自然のみかた」です。加えて、未来に向かって自然保護の重要性を認識し行動する「使命感」が重要で、さらに、参加者との「コミュニケーション力」、現場での「リスクマネージメント力」とテクニカルな能力も必要です。
また当協会では、からだの不自由な方や、子どもからお年寄りの方まで、多様な参加者の個性と感性を引き出し、五感を使って自然観察をもっと深めていく観察会を、「ネイチュア・フィーリング」と提唱し、主に自然観察指導員の方に向けた研修会も行っています。
自然の不思議や魅力を多くの方々と共有し、自然を大切に思う人を一人でも増やしたいと願っています。

*自然観察指導員