竹田津実先生のフォトエッセイ:オジロワシ

 

ヒヨドリ

小見出し

庭の給餌台が夏のひと時、ほんの少し淋しくなる。
自然が一番豊かな季節を迎えていることを物語る。
なのに今年は少し違った。
ヒヨドリが朝から騒ぎたてエゾゼミの大合唱を一瞬、慎とさせた。
私は困った顔をして窓を開ける。

ヒヨドリは給餌台の常連客だった。
厳しい冬の日々、ピーョピーョと鳴いて春を呼んでいた。
それがうれしくてリンゴの残りものをせっせとやった。

去年の暮れ、友が来て、「あいつはいけません。来年からは敵になります」と宣託して帰って行った。
大きくなったサクランボの木やブドウのつるをゆび指しながら・・・。
御宣託はみごとに適中した。
サクランボは二粒だけを申しわけ気に残して全てを平らげ、
今はブドウの色づくのを待っている気配である。

「ピーョピーョ、ピッピッ」の声は、鳥が好きだということと、
もぎたての果物を食べたいと夢みることは両立しないことを知らせていた。