こんなときは、下準備に時間がかかる料理や、ちょっとした保存食を作るのに最適。
そのひとつに、「牛すじ」を使った料理があります。
私の出身地である大阪では牛すじは、庶民的な味として好まれていて、お店でも家庭でもたびたび登場する素材のひとつ。
その代表料理が「おでん」。

関西では“関東炊き”と呼ばれ、そこに牛すじは欠かせません。
じっくり煮込んだ牛すじはとろとろになって、もはや竹串に刺さらないほど。ほどよく脂があってコクのある味わいが、大根やこんにゃくに浸み込んで、熱燗がすすむ、すすむ!
牛すじは普段店頭に並ばないことが多いので、お肉屋さんに注文しておきます。もともと安いものなので、ここは出来るだけ“高級和牛”のすじを分けてもらうようにしましょう。
1度に1kgをめやすに準備して、いろいろな料理に使います。

 まずは下茹で。お鍋にたっぷりの熱湯を沸かし、ここにすじを入れて10分ほど茹でます。ザルにあけ、鍋にすじ、かぶるくらいの水を入れ、沸騰したら中火で20分くらい茹で、再びザルにあけます。そして鍋にすじ、水とみりんを半量ずつかぶるくらいまで入れ、蓋をして40分ほど茹でて下茹で完了。おでんの場合は一口大に切ったすじを竹串に。みりん、しょうゆで味付けしただし汁の中に、下ゆでしたこんにゃく、大根、そしてすじを入れて柔らかくなるまで煮込みます。ちくわなどの練りもの、ゆで卵などは途中で入れましょう。煮込み料理はクツクツ煮える様子を待ち遠しく眺めるのも、楽しみのひとつ。時間をかけた分、出来上がりの喜びもひときわです。たっぷり作ったおでんは、まずその日に作りたての“新鮮”な味を楽しみ、次の日に染みた味わいを堪能し、そして翌日には艶々になった茶色と豊潤な味に大満足。お楽しみがしばらく続くのも、おでんの魅力です。


残ったすじは一口大に切ってタッパーに入れて冷蔵保存。今回は赤ワインで煮て、ハヤシライスに仕上げました。そうそう、みりんと水で最後に下茹でした茹で汁も、おなかにじんわり染みわたる、おいしいスープになるので、けっして捨てないで下さいね!

◆日本への伝来は?
弥生時代の日本人は様々な野禽を食べていたようです。(『貝と獣骨の知識』 金子浩昌著)各地の貝塚からはイノシシ、鹿、サル、野うさぎ、変わったところではイルカの骨なども出土しています。これらは、古来日本人が様々な肉を食べていた証拠です。それが仏教の隆盛によって、『日本書紀』、『続日本書紀』に記載される“牛馬犬猿鶏の宍(しし)のを食うことの禁令”によって、肉食が日本人の食習慣から欠落してしまいます。(『食生活の歴史』 瀬川清子著)
以降長らく途絶えていた肉食が復活するのは明治維新。 西洋文化の流入は世界中の美味の解禁を意味しました。 誰もが知っているこの“牛なべ”の流行によって、多くの人々に広く愛される牛肉料理は、テーブルをにぎわせるご馳走の代表格になったわけです。

◆和牛とは?
代表的な和牛として知られる黒毛和牛は、厳密には純粋な日本の牛ではありません。
明治初期、各県において良質な牛を作り出すために、外国種と和種の交配が行なわれました。兵庫県では、ショートホーン、デボン、ブランスイスなどの3種の牛と和種との掛け合わせ、広島県や島根県ではこの他にエアシャーという外国種も掛け合わせています。
この交配から100年以上の時間が経ったこともあり、現在では和種(和牛)と呼ばれているのです。

◆牛肉のおいしさ&栄養
 
〜牛肉は良質なたんぱく質の供給源〜
牛肉には脂質・たんぱく質・鉄分が豊富に含まれています。特に鉄分は豚肉よりも多く含まれています。肉に含まれるたんぱく質は私達の体を構成するのに不可欠な必須アミノ酸を含んだ良質なたんぱく質で、身体に抵抗力をつけるのに効果的です。
ただし動物的脂肪にはコレステロール上昇作用があるので食べ過ぎには十分気をつけてください。




●Cooking Card No.5
『牛すじの赤ワイン煮』

(1) 玉ねぎ1個、トマト1個は1cm厚さのくし切り、にんにく1カケはスライスする。
(2) フライパンにオリーブ油大匙1、にんにくを入れて火にかけ、香りがでたら下茹でして一口大に切ったすじ1カップ、玉ねぎ、トマトを入れて炒める。
(3) 赤ワイン150ccを加え、蓋をして煮る。トマトケチャップ大匙2、塩少々で味を整える。

●Cooking Card No.6
『牛すじの春雨スープ』

●みりん、水で下茹でした茹で汁に生姜スライスを3枚入れ、煮立てる。しょうゆ、塩で 味を整え、春雨を入れて柔らかく煮る。器に注ぎ、小口切りにしたねぎを浮かべる。