◇イカは魚類ではなく、貝類

イカを魚の仲間かと思っている人も多いと思いますが、正確には貝類に属します。
生物を12門に分ける分類法によれば、イカは軟体動物というカテゴリーに入ります。
「軟体動物門」の代表格としては、巻き貝と二枚貝があげられます。貝類とイカとが同じだと初めて聞くとかなり違和感がありますが、各門を定義付ける生物の特徴を当てはめていくと、イカやタコは貝類を同門となります。
例の舟形の「いかの甲」や俗に「骨」というペラペラの軟骨状のもの(軟甲という)は、正確には「貝殻」ということになります。

◇世界中では450種

イカは分類上コウイカ目とツツイカ目に分かれ、世界中で約450種が生息しています。
このうち食用とされるイカはコウイカ科、ヤリイカ科、スルメイカ科の3種に属する約100種で、このほかホタルイカ,ソデイカ,テカギイカ等が日本だけで食用とされています。
コウイカ類は韓国、台湾、ベトナム、タイの沿の他中東大西洋(モロッコ、モーリタニア)及び地中海の沿岸に分布し、南北アメリカ大陸沿岸には全く存在しません。
ヤリイカ類は中西太平洋(インドネシア、フィリピン、タイ)、中東太平洋(米国)、南西大西洋(アルゼンチン、フォークランド諸島)の沿岸水域に生育します。
一方、スルメイカ類は沖合性で温帯から亜寒帯にかけての大洋に広く分布しています。

FAO(国連食糧農業機構)の世界水産統計(2000年データ)によると、世界のイカ漁獲量はコウイカ50万トン、ヤリイカ30万トン、スルメイカ230万トン、その他20万トンの合計330万トンです。

◇イカは鯨と人間の大好物

イカの潜在資源量は5,000万トンとも1〜3億トンともいわれますが、食用となっているのは、全資源量の1/16〜1/100を利用しているに過ぎません。
近年、人口増加による食糧危機が懸念される中、人類の貴重な蛋白源として、いままでイカを食べる習慣のない国からも"新たな食材"として熱い視線が向けられ始めました。
さて、人類以外にイカを大量に食料としている生物としては鯨!
鯨の中でも資源量の一番大きいマッコウクジラ(全資源量の約60%)は専らイカを餌料とし、
マッコウクジラの年間摂餌量は9千万トン〜2億2千8百万トンと推計されています。この95%がイカとすればおよそ8千万トン〜2億トンのイカがマッコウクジラの餌になっている計算になります。 これは実に、世界中の年間漁獲量の30倍〜66倍にもなります。
■日本人とイカ

イカは世界中の海で年間約330万トン漁獲されています。日本近海はイカの最大漁場で約30万トンが漁獲されますが、日本のイカ釣り船は太平洋やアルゼンチン沖までイカ漁に遠征しています。さらに需要を賄うために輸入で補い、約100万トン(世界のほぼ30%)が日本人の胃袋に収まっています。
平成13年家計調査によれば国民1人あたり生鮮イカの年間購入量は約1.21gで、第2位のまぐろ1.06kg、第3位のサケ1.05kgを押さえて堂々第1位です。このトップの座はここ10年間、譲ったことはありません。

■栄養価

健康保持に最も望ましい比率は、摂取エネルギー当たり、タンパク質(P):12〜13%、脂肪(F):20〜30%、炭水化物(C):57〜68%といわれています。和食中心の献立は、P:約15%、F:24%前後、C:約61%となり、理想的な栄養比率であるのに対し、欧米型の食生活は、脂肪の比率が高く、炭水化物の比率が低くなっています。
イカに含まれる脂質は、その他の魚介と同様に、動脈硬化症、脳卒中などの循環器系疾患が発症を予防する良質な不飽和脂肪酸。さらに、イカのタンパク質はリジンを多く含み、日本人の主食である米との相性がよく、栄養価の基準となるアミノ酸スコアでチェックすると、ほぼ理想な数値になります。
さて、イカは歯ごたえがあるため、「消化しにくい。」と思われがちですが、スルメイカで93.5%、スルメで90.0%と他の魚類と大差ないほど、消化率が良いのです。消化率が良いということは、循環器系への負担が少ないこと(=胃もたれが起こりにくいこと)を意味します。
イカは栄養バランスも、消化率もよい、優秀な食材です。

■食べごろ

ほぼ一年中日本人の食卓に上るイカ。 素材の鮮度を見極めて、和食、中華、地中海料理などさまざまなレシピで美味しくいただいてください。