岡本峰雄さんインタビュー:第1部

 

今回先生からお話を伺うことになり、改めて気がつかされたのですが、「サンゴ」について意外に知らないことが多いと思いました。まずは「サンゴ」に対する基礎知識を教えていただけますか?

写真:岡本峰雄先生

サンゴは海藻と共に、沿岸に生息し光合成をおこなう生き物の代表格です。サンゴというのは緑色ないし様々な色がついている印象があると思いますが、サンゴの骨格をご覧いただけるとお分かるいただける通り、本来は色がついていないのです。骨格をよく見てみると、無数の小さな穴が見えると思いますが、生きたサンゴの場合、この穴の中に無色透明なイソギンチャクのような「サンゴ虫」が生息しています。「サンゴ虫」は、昼間は閉じて中に入っていますが、夜になると触手を伸ばして小さな動物(ゴカイや魚など)や有機物(マリンスノーの一種)を食べて暮らしています。そして、サンゴ虫は葉緑体をもった微細な藻類を体内に取り込んでいるので、生きたサンゴを見ると緑色をしているのです。体内に住む藻類は、直径0.01mmほどの大きさで、1平方センチメートルあたり50万個もの数になります。つまり、サンゴというのは、夜は”動物”であり、昼は”植物”であるというわけです。

写真:珊瑚 写真:珊瑚

 

なぜそのような仕組みをもったのでしょうか?

サンゴが多く生息しているのは南の海域です。南方の海域というのは、栄養が全然ない場合が多いのです。水が澄んでキレイだということは、水中に生物の栄養分等となるプランクトンの浮遊量が少ない、つまりスカスカで何もない海ということですから、そういうところで生き抜いていくには、毎日を生きることだけで精一杯。昼は藻類が植物として光合成をして自ら栄養分を生産し、夜はサンゴ虫が動物として僅かなプランクトンを捕獲する。まさに自転車操業の状態で生き延びているのです。

たとえば、マグロでもカツオでも南の海で獲れたものは脂があまりありませんよね。それが、豊かな海へと北上することで、栄養を蓄えて大きくなり、しっかり脂も乗ってくるわけです。 つまり、サンゴが生育する環境は、基本的に生物にとって非常に厳しい状況なのです。藻類の力を借りて昼間は植物になり、夜は動物になって、お互いに栄養のやりとりを一生懸命昼夜問わず続けることで、やっと成長し、増えていくことができるのです。

 

“サンゴ礁”というのは、サンゴが集まったものと考えればよいのでしょうか?

枝サンゴや丸い塊状サンゴも、もともとは1個の幼生が流れ着いて1個のサンゴ虫になったものから分裂して育ったものです。サンゴ虫は自分が作った骨格のくぼみの中に住みますが、虫が分裂してそれぞれが骨格を作ることを繰り返しサンゴ(群体)になります。太い枝や大きな塊のサンゴも、中のサンゴ虫が死んで表面の1層だけが生きています。丸い大きなサンゴは、表面の数ミリだけが生きたサンゴ虫で、内部は死んだサンゴの骨格です。死んだサンゴや生きたサンゴが折れて瓦礫状になって堆積して地形を作ったとき、「サンゴ礁」という呼び方をするわけです。ですから、生きたサンゴがたくさん育った健康な「サンゴ礁」もあれば、サンゴが死んだ「サンゴ礁」も存在します。

1996年 石垣島 石西礁湖

1996年 石垣島 石西礁湖 礁湖内の砂地に豊かな枝状サンゴが繁茂

1997年 グレートバリアリーフ

1997年 グレートバリアリーフ

2001年 西表島東岸

2001年 西表島東岸 コユビミドリイシ群集

2002年 モーリシャス

2002年 モーリシャス 1個の幼生が育って巨大なツリー状の珊瑚に

2005年 宮古島

2005年 宮古島 まだ豊かな巨大サンゴが残る海域もある

2007年 インドネシア シュラデン島

2007年 インドネシア シュラデン島