中村幹雄さんインタビュー:第2部

 

先生はシジミが水質浄化作用に大きな役割を果たしていると主張されていますが、具体的にはどういうことですか?

写真:中村幹雄先生

湖沼の富栄養化の原因は陸域から栄養塩の窒素、リンが湖内に流入し、植物プランクトンがその窒素、リンを取り込み、異常繁殖することに起因しています。ヤマトシジミはその植物プランクトンを餌として体内に取り込みます。そのヤマトシジミを漁獲することは、栄養塩の窒素、リンを湖から外に持ち出すことになります。私の計算ではシジミ漁業による湖からの窒素の湖の外への持ち出し量は一日に200kg。一年では73tが湖から外へ除去されていることになります。

一般的に、富栄養化の原因である窒素やリンが湖に流入するのを防ぐためには、下水処理場など大規模な設備と莫大な費用が必要です。また、一度湖に流入した窒素やリンを除去する有効な手段は今のところありません。しかし、シジミ漁業が産業として成り立つばかりでなく、宍道湖の水質の浄化という素晴らしい役割を果たしている事実は意外と知られていません。

さらに、ヤマトシジミは入水管から水を吸い込み水中の植物プランクトンを主とした懸濁物を鰓(えら)でろ過し、餌として体内に取り込みます。1グラムのシジミ1個が入水管から1時間に170mlもの水を取り入れます。つまり、宍道湖の約3万トンのシジミは1時間に約53億リットルの水をろ過することになり、その計算では約3日間で宍道湖の水を全部ろ過する計算になります。従って、宍道湖の水をろ過することによって水の透明度などが高くなり、宍道湖の水質浄化に大いに役立っています。ヤマトシジミの漁業による栄養塩の系外への持ち出し、ヤマトシジミろ過作用などによってヤマトシジミが宍道湖の水質浄化に実に大きな役割を果たしている事をお分かりいただけたかと思います。

写真:ヤマトシジミろ過作用実験 写真:ヤマトシジミろ過作用実験

 

研究所には若いスタッフの皆さんもいらっしゃいますが、どのような調査活動をされていらっしゃるのですか?

日本シジミ研究所は私を除いて皆若いスタッフからなり、それぞれに頑張っています。
調査は、はっきりと言えば水生生物あるいはその生息環境に関係するなら、どんな調査でもやります。現在はヤマトシジミの調査を主としていますが、最近は中海・宍道湖の魚介類、底生生物、水草、プランクトン、水質などの調査が多くなっています。また河川での魚の調査の依頼も来るようになってきています。研究のモットーは、必ず自分で現場を踏み、自分の目で見て自分が採取し、自分で分類・同定・分析することとしています。

研究所では10隻もの調査船を所有し、いつでもすぐに調査に行くことができる体勢を整えています。そして、研究員は全員が船の運転を行うために海技免許と、潜水調査を行なうために、潜水士免許を取得し、調査に役立てています。

採取生物の分類作業
採取生物の分類
調査船
シジミ漁の道具
調査用デジタルカメラ
研究所