富良野 地球の未来を考える場所



富良野自然塾

編集部:今回、こうして富良野に再び戻って来て、森が確実に再生し始めていることに驚かされました。

齋藤氏:若木が根づき、フィールドの景色を変わり始めています。森の再生というプロジェクトは時間のかかる作業と覚悟をしていたので、こうして眼に見えるスピードで森が変化し始めていることに僕たち自身も驚いています。

編集部:今日、改めて地球の道を歩き、前回よりさらに追加された表現や表記に気づきましたが。

齋藤氏:ご承知のように、僕たちは地質学者でも天文学者でもありません。地球の今、そして未来を考えるために"今まで地球がどのように生きてきたのか?"に想いを馳せることの重要性を感じた倉本の発案の下、1000万年を1メートルに換算した"地球の道"を作りました。ですからこの道は全て自然塾スタッフの手作りです。最初は単純に460メートルの道を作ったのですが、実際に作ってみてこれではダメだということになりました。この道程に地球の姿を示す数字や情報を可能な限り"可視化"することで、豊かな想像力を持って歩いて欲しいという倉本のアイデアで、石を置いたり、色をぬったり、恐竜の足跡を作ったり、さまざまな"地球の痕跡"を配してみました。ここにお迎えした専門家の方には積極的にご意見を伺い、そこで勉強した事実はどんどん"眼に見えるもの"としてこの道に反映しています。多分前回いらした時は、カンブリア紀の生物が爆発的に増えた海を表現した池はなかったかもしれません。なにしろ、我々の人類の祖先があらわれるのはこの地球の道の最後の2センチにすぎません。誰も見たことがない事態を納得できるかたちにして表現しようというのですから、確かに難しい試みではありますが、楽しみながら取り組んでいます。

編集部:富良野自然塾を2005年にスタートされて以来、大きく変ったことはどんな点ですか?

齋藤氏:この6年間、「裸足の道」や「地球の道」、それに「緑の教室」と「闇の教室」など、さまざまなオリジナルなプログラムを創り上げ、富良野にまずは来ていただき、実際に参加していただくことで、五感に訴えかける環境プログラムをテーマに展開してきました。これに加え、最近は訪問授業にも実施しています。
修学旅行で参加してくださるようになった札幌の小学校などにこちらから出向いて「地球を考える授業」を担当したり、道内外の大学生を対象に、2泊3日のコースで環境について学ぶ大学講座を開催したりしています。

さらに来春4月には愛媛県今治市と京都府宮津市のふたつの市で、富良野自然塾をモデルとした環境教育プログラムが開設されます。今治市は市役所からの要請、宮津市は地元のNPOからの要請です。 開塾当初から「日本の環境教育のひとつのモデルになること」をゴールに歩んできましたが、それが今、現実になろうとしています。

編集部:小学校への訪問授業についてお話しいただけますか?

齋藤氏:ご覧のように冬になると、フィールドでのプログラムの展開は不可能です。この時期を利用して、こちらが小学校に出向き、プログラムに参加する前段階としての"地球について考える時間"を共有し、春から再開されるフィールドでのプログラムへの参加を楽しみにしてもらいたいと考えました。実際、"46億年の地球の道"を歩き、この地球上で起こったことに想いを馳せ、現在進行している事実に向き合うには、それなりの事前の準備が必要なはずです。自分たちが生きて行く上で絶対に不可欠な「酸素」、「水」、それらが森と密接な関係にあるという事実にしても、子供たちにとっては、突然説明されても全くピンとこないかもしれません。まず、普段の教室の授業で"考える時間"を持ち、その次に、実際に考えたことを"体験する時間"を持つ、僕の見る限り、この訪問授業は有効に機能しているようです。

編集部:フィールドでの環境授業のみならず、事前学習が加わり、さらに丁寧なプログラミングへと進化しているのですね。
さて、そんな多彩な仕事をこなす富良野自然塾の現在のスタッフの人数、そして皆さんの役割について教えてください。

齋藤氏:現在、8名のスタッフが富良野自然塾の専任スタッフとして勤務しています。今年のスタッフ募集には全国からの応募があり、4名(内1名は夏まで)が採用されました。開塾当初は演劇志望の富良野塾の塾生が自然塾のスタッフの中心を占めた時期もありましたが、現在はまさに第二期、まず環境問題そのものに興味を持つスタッフが中心となって活動しています。仕事の内容は自然塾の運営に関わる全て。環境教育プログラムの案内役であるインストラクター、植樹や育苗作業、フィールド内の各種メンテナンス、季刊誌の編集、広報、経理、その他一連の準備作業を全員で対応しています。ただインストラクターは、直接プログラム参加者と接する重要なミッションを果たすためにも、然るべき審査があり、現在の有資格者は14名で、今いるメンバーの中では3名のみです。

我々の祖先である現世人類がその後の進化を遂げた理由としても上げられる"コミュニケーション能力"、せっかく富良野に来ていただいた参加者に、環境プログラムの意義をしっかり伝え切るだけの知識と説得力、そして人間としての誠実さを基準に厳正に審査します。 説明の文言に"伝えたい気持ち"を載せて話せるようになるには、それなりのトレーニングと資質が求められるからです。そして何より本人の「みんなに伝えたい」という強い思いが必要だと僕たちは考えています。

編集部:こうして再び富良野に戻ってきて気づかされることの多さを噛みしめています。自然塾のプログラムに何度も参加される方も多いのではないでしょうか?

齋藤氏:確かに富良野に戻ってきてくださる方がいらっしゃいます。富良野の森に再び訪れることで、再認識されること、想いを新たにされることがあるようです。

ダ・ウィーンの『進化論』の言葉「強いもの、賢いものが生き残るのではない。変化できたものだけが生き残ることができるのだ」のではないですが、僕たちも新たな時代に適応し、着実に進化することで、常に新鮮な感動がある環境教育プログラムを提供してゆきたいと考えています。

 

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富良野自然塾の専任スタッフ

上段左から:小川喜昌(おがわよしあき)/ 林原博光(はやしばらひろみつ)/ 中島吾郎(なかじまごろう)/ 齋藤典世(さいとうのりよ)
下段左から:長尾泰光(ながおやすみつ)/ 佐野慧子(さのけいこ)/ 保坂洵子(ほさかじゅんこ)/ 鴇田真理(ときたまり)