ノマドの世紀に第7回

 

写真:ペルシャ

タイトル

ケニアのナイロビから泥棒列車に乗って
海岸沿いのモンバサの町まで一晩。
夜中に出るね、泥棒が。
でも、盗られるものなんて何も持っちゃいない。

そこからラムという小島に渡る。ここはイスラム圏だ。
アフリカで見る海と黒いベールは
潮風の中に溶け込んで異国情緒に満ちている。
潮の流れは中東イスラムから。
かつては、シンガポールを経由してインド、ペルシャ、アフリカと
日本人娼婦も流れ着いた。隣島ザンジバルにはそんな文化も残っている。
地元の船頭には片言の日本語を操る男もいる。

小舟にゆられながら、「千夜一夜物語」に思いを馳せる。
ペルシャはヤズドの町。
ゾロアスター教の集会に参加したときのこと。
ゾロアスターというショッカーの悪党のような
怪しげな響きをもつ一神教は、ユダヤ、キリスト教にも
影響を与えた古い宗教で、ペルシャ読みではザラスシュトラ。
モーツアルトの「魔笛」の僧の名だ。

ヤズドは砂漠の町で、
乾いた埃の中で女たちがバラと水を胸に、
経典を朗読していた。
それは悠久の時間の魔法をこちらに投げかける。
真夏の金魚売りのけだるさ
あるいは午睡用のゴザを売る男の半音階。
ゴザやぁ寝ゴザぁ〜

音の周縁を消してしまうことで
かえって大きな宇宙とつながるような感覚は
フリードリッヒ・ニーチェのツァラトゥストラかく語りき
で「永劫回帰」となって現れる。
ツァラトゥストラはザラスシュトラのドイツ語読み。
ニーチェの超人イメージはフレディ・マーキュリーに
受け継がれ、「伝説のチャンピオン」となって
世界を駆け巡る。
ゾロアスター教徒だったフレディは、
たしかアフリカの離島ザンジバルの生まれだ。