カナダのハドソン湾周辺のポーラー・ベア・ウォッチング
北極熊と共存するツンドラの彼方の町へ

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白熊(北極熊)は、北極圏の海辺に広く分布して生息しているが、人間が居住する地域に近づくことはほとんど無い。内陸で夏を過ごす白熊は、海が凍結し始めると海岸に出てくる。好物のアザラシを追って氷の海を渡って行くからだ。マニトバ州の北端、ハドソン湾に面したチャーチルは、この白熊の移動ルートに位置している世界で唯一の町。見た目は可愛くても白熊は凶暴な性格。チャーチルの人々は、時には町の大通りまで入り込んでくる白熊と何とか共存する方法を考え出した。それがポーラー・ベア・ウォッチングだ。

タンドラバギー
立ち上がると2.5 m以上にもなる白熊を観光客が安心して観察することができ、かつ永久凍土を傷つけず、岩の多い道なき道を走るために造られた特別仕様の大型車。幅が広く弾力性のある巨大な車の上に、バスのボディを乗せたような形。後部に外に出られる展望荷台を付けたものもある。
ポーラー・ベア・
ウォッチング
タンドラバギーを使った観光ツアーはGreat White Bear Tours(204-675-2781) やTundraBuggy Tours(204-675-2121) などが催行している。料金は昼食込みで160 カナダ$


「車両点検の際は白熊に十分注意すること」チャーチルと州都ウィニペグを結ぶVIA鉄道の運転指示書には、毎年晩秋になるとこんな注意事項が加えられる。チャーチルには白熊の危険を身をもって体験した人も少なくない。しかし、極北で暮らす人々は、白熊独特の美しさも良く知っている。

「ほんの子どもの時をのぞけば、白熊は一生一人ぽっちで暮らすんだ。時々、数匹で遊んでいるような時もあるけどね・・・そりゃあきれいだよ。いくら見ててもあきない。」と町の人は誰でもそう言う。また、町をとりまくツンドラ(永久凍土)の原野も、一見荒涼としているが、良く見れば、背の低い灌木には鮮やかな実がなり、岩には何十年もかけてゆっくり成長するカラフルな苔類、そして狐や雷鳥など、豊かな命の活動に出会える。

 このツンドラの素晴らしさを伝えたいという思いと白熊問題とを一挙に解決したのが、「観光」という発想転換だった。ツンドラの土壌へのインパクトを最小限に押さえ、巨大な白熊から観光客を守るために設計された巨大なタンドラバギーに乗り、町から数時間離れた白熊ルートに出掛けて行く。自然の環境の中で出会う白熊は、動物園で見かけるのとは明らかに違うパワフルな動き。それでいて、思わず触りたくなってしまうほど可愛らしい耳のあたりの輪郭や黒い瞳。単なるサファリでは味わえない感動だ。

 晩秋になれば北極圏の日照時間は極端に短くなる。3時を過ぎればすでに夕方だ。日没近い空にうっすらとオーロラが舞うことも少なくない。

インフォメーション
パッケージ・ツアー

白熊ウォッチングのシーズンは10月から11月中旬までの45日程度。その間、せまいチャーチルの町で宿を押さえることや、ウィニペグなどからの交通手段を手段を確保することは非常に困難。( 永久凍土で道路が造れないので、チャーチルへは航空機と鉄道しかアクセスしていない) ほとんどの観光客はウィニペグ発の1 週間のパッケージ・ツアーを利用する。

料金は交通費、宿泊、白熊ウォッチングの料金を含んで2200カナダ$〜。
Natural Habitat Adventures社
・303-449-3711 FAX303-449-3721
E-mail: nathhab@worldnet.att.net

Frontiers North Inc.
・204-949-2050 Fax204-663-6375
E-mail: frontiers-north@mb.sympatico.ca

VIA利用の方法

宿を押さえるのが無理なら「日帰り」も可能。ウィニペグ発のVIA鉄道なら車中2泊でチャーチルに朝着き、一日白熊ウォッチングを体験して、その夜ウィニペグに戻る列車に乗る。寝台車はツアーに押さえられていることが多いが、エコノミー席ならシーズン中でも大丈夫。料金は往復421 ・58・( 税込) 。この場合も事前に必ず白熊ウォッチングのツアー会社に予約を入れておくこと

チャーチルへの旅のコツ

10月から11月中旬といっても、海が凍結を始めるくらいだから気温は当然零下。十分な防寒具、特にしっかりした耐寒ブーツを用意すること。しかし、ホテル内やタンドラバギーの中は暖房がきいているので心配ない。