--世界一の海鳥の繁殖地ニューファウンドランド島へ
--鳥達の愛する海辺は人間にとっても大切な場所

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カナダの、そして北米大陸の最東端に位置するニューファウンドランド(NFL)州は日本国土の約3分の1の面積の広大な島だ。島の周辺には氷河が膨大な力で削りとったフィヨルドの荒々しい海岸線が続く。毎年6月になると、この海岸にキラキラと鱗を輝かせながらシシャモの群れが産卵に押し寄せてくる。そのシシャモを追ってザトウ鯨も姿を現し、壮麗な姿の氷山も北極から流れ寄って来る。そして、大自然が見せてくれるこの雄大なドラマの主役は何十万羽もの海鳥達だ。
カツオドリは、一度つがいになると一生相手を変えず、お互いの声で相手を確認する
セント・メリー岬のバード・ロックを埋め尽くすように集まるカツオドリの大群



岩場の狭い草地に巣を作っているパフィン

NFL島にようやく春がやってくる頃、波の上に不思議な影が現れる。カツオドリの大群がフロリダ周辺から北上してきたのだ。島の南側にあるセント・メリー岬の先端には、このカツオドリ(シロカツオドリ)の大繁殖地がある。毎年1万羽以上が集まり、6月上旬にここで卵を産み、育てた雛を連れて10月に再び南下していく。 カツオドリは、広げると2mにもなる羽を持っており、柔らかなカーブを描いてのんびりと飛翔しているように見える。しかし、いったん餌の魚を見つけると、鋭い角度で海へ向かって急降下していく。時には数十mもの上空から水中に突っ込んでいく姿には心を揺さぶる美しさがある。

 セント・メリー岬は自然保護区になっており、2万羽近くのウミガラスや黒足ミツユビカモメなどもたくさん集まって来る。鳥達の繁殖期にあたる6月頃は、温められた陸地に海からの冷たい空気があたり、深い霧が発生する日が多い。岬の先端に向かって歩き始めると、ミルク色のカーテンの向こうから不思議なシンフォニーのように鳥たちの鳴き声が沸き上がってくる。30分近く歩いて崖に近寄ると、岩を覆いつくすように揺れる白い羽が視界に飛び込む。世界で3番目と言われる大繁殖地ならではの光景だろう。訪れる人の多くが感動で目を輝かせながら立ち尽くしている。

NFL島を訪れるなら、ユーモラスな姿で人気のあるアトランティック・パフィン(ニシツノメドリ)も見逃せない。島の東海岸にあるウィットレス・ベイ自然保護区周辺に集まるこの鳥は、飛ぶのはあまり得意ではないようで、せわしなく小さな羽を動かしている様子が可愛らしい。このパフィンも潜水は名人。水中でなら時速13kmという驚くようなスピードで魚を追っていく。繁殖期にはくちばしが鮮やかなオレンジ色になり、蒼い氷山の上などにチョコンと立っている姿には思わず微笑んでしまいたくなる。

島民の多くが漁業に関係しているNFLでは、誰もが海を守ることの大切さを切実に感じている。海鳥がお腹いっぱい餌を集め、安心して卵を育てられる環境は、人間にとっても豊かな海辺であることを知っているからだ。

インフォメーション
アクセス

NFL島へは、トロントからエア・カナダやカナディアン航空などが定期便を運行している。飛行時間は約2時間半。空港からセント・メリー岬までは、1号線経由、州道100号線で車で約2 時間半。公共交通のアクセスはない。割高ではあるが、日本人ガイドが付く少人数のツアーがセント・ジョンズから催行されている。問い合わせ先はミキ・エンタープライズ ( TEL709-747-2233 Fax709-747-2383) へ

セント・メリー岬自然保護区

保護区の入口にはインフォメーション・センターがあり、鳥の生態や自然環境についての展示が行われている。

Cape St. Mary's Ecological Reserve
開館期日 5月初旬から10月末まで開館時間 毎日午前 9時から午後7 時入場料 保護区への立入りは無料だが、センターへの入場は有料 電話 (709)7292431

ウィットレス・ベイ自然保護区へのツアー


ウィットレス・ベイの自然保護区へ中型船で入るボート・ツアーは、O'Brien's Bird &Whale Tours 社( TEL709-753-4850 Fax 709-753-3140) など数社が運行しており、セント・ジョンズから送迎してくれる。