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環境に優しい車としてヨーロッパで高い評価を得るディーゼル車ですが、日本でのそれは残念ながら非常に低いのが現状のようです。あるヒアリングの結果でも"業務用、汚い、うるさい、環境(健康←黒煙)に悪い"という負のイメージが定着し、乗用車としての選択肢からはすっかり外れてしまっているようです。ディーゼル車とガソリン車では何が違うのでしょうか。ヨーロッパがディーゼル車に注目する2つの理由を確かめてみましょう。
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ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの相違点
ガソリンエンジン
ディーゼルエンジン
点火方法
電気火花
圧縮着火
混合気
均一
不均一
出力調整
吸気絞りによる混合気量
燃料量
総括混合気濃度
量論・一定
希薄・変化
燃焼形態
予混合燃焼
予混合燃料+拡散燃料
圧縮比
6-10
14-23
排気温度
600-900℃
100-700℃
排気中の酸素
なし
あり


ガソリンエンジンは、スパークプラグによって火花点火し、間欠燃焼をスタートさせるのに対し、ディーゼルエンジンでは圧縮行程終盤の高圧・高温空気にタイミングよく燃焼噴射を行い、スパークという外的な高密度エネルギーなしに自然着火させるシステムです。ガソリンエンジンを英語では、点火機関【Spark Ignition Engine】、ディーゼルエンジンを圧縮着火機関【Compression Ignition Engine】と呼ばれるのはこの構造的な相違から来ています。

ガソリンエンジンはシリンダー内を基本的には均一な混合気を形成させ、それを電気火花で点火して燃焼させるシステムです。いわばガス爆発と同じ燃焼形態で、ガスがシリンダー内に大量に充満しないと起こらないので、理論空燃比に近い濃度でなければ燃焼は成立しません。つまり、均一になった混合気が一点の点火源(=スパークプラグ)の電気火花から燃え広がるには、混合気をある程度の濃度に保たねばなりません。薄すぎると燃焼が緩慢になり、性能が低下し、場合によっては“失火”という事態に陥ってしまうからです。そのため,ガソリンエンジンでは正確に吸入空気量をコントロールする必要があり,そのために空気を取り込む吸気管に絞りなどが設けられています。この絞りが吸気抵抗となってエンジンの効率を低くしてしまっているのです。

一方、ディーゼルエンジンは,シリンダー内に空気をできるだけ吸い込み,空気のみをピストンで圧縮してから高圧にした燃料をタイミングよく,シリンダー内に直接噴射して燃焼させるものです。空気だけを先ず圧縮するのでノッキングと呼ばれる異常燃焼が起こらないため、ガソリンエンジンよりも,エンジンの圧縮比をより高めることができるのが特徴です。吸気絞りがないことと,圧縮比が高いことで,ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも熱効率が高くなるのです。





自動車の汚染物質の問題となるのは、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO2)、その他未燃炭化水素のガス状物質、そしてディーゼルに問題になっている微粒子(PM、SPM)です。1970年代、日本でも"光化学スモック"等で社会問題となったガス状物質について言えば、元来ディーゼルエンジンよりガソリンエンジンの方が多く排出する事実がありました。

1970年にアメリカ・カルフォルニア州で定められた"マスキー法"は自動車の排出ガス規制へのターニングポイントとなった大事件でした。当時の排出ガス中の一酸化炭素、炭素水素、窒素酸化物の90%の減少を義務付けるという世界で最も厳しい自動車排出ガス法律は、いち早く日本のメーカーによって達成され、その後も日本のメーカーはこの分野ではトップランナーとしてクリーンなエンジン開発の努力をしています。

マスキー法という厳しい基準をクリアーすべく、ガソリン車の排出ガス清浄化技術を根本的に実現させたのは、【三元触媒】というシステムでした。【三元触媒】とは、窒素酸素物を還元すると同時に、未燃炭化水素と一酸化炭素を酸化させてしまう白金系の触媒で、これを排気管に装着することでガスの清浄化を可能にしたのです。近年のガソリンエンジンの排出ガス対策は、こうした触媒技術と制御技術、そして精密な計算技術によって可能になったのです。

さて、この【三元触媒】技術は,排ガス中に酸素があると利用できません。ディーゼルエンジンは,前述したように、できるだけ空気をシリンダー内に吸い込んでいるので燃焼した後の排ガス中にも酸素が残存しています。したがって,【三元触媒】はディーゼルエンジンでは使えません。

では,ディーゼルエンジンの排ガス対策はどうしたかというと、排出ガス改善へのアプローチを“出口”ではなく、エンジンの頭脳そのものでもある燃料噴射の電子制御システムに目を転じることで、この問題の打開をしたのです。

このシステムは【コモンレール】と呼ばれるもので、簡単に説明すると、燃料噴射圧力を上昇させ,シリンダー内への燃料噴射タイミングを正確にコントロールする画期的なものです。現在のディーゼル車はこのような電子制御技術によってクリーン化の進化を遂げているのです。



GT(グランド・ツーリズム)という遠距離ドライブを前提とするヨーロッパなどのクルマ社会では、ディーゼル車は、高いエネルギー効率等による経済的メリット(燃費の良さ)によって、魅力在る商品として支持を受けてきたといえます。更に、最近では、このエネルギー効率の良さが、地球温暖化防止につながる魅力のひとつとしても注目され、オーナーのグリーンコンシューマー(環境負荷の低い商品を買うことで、エコを実践する消費者)としての価値も生み出す商品として、注目されているのです。
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