自動車燃料として、現在はガソリンと軽油が主流であり、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、CNG(Compressed Natural Gas )などが普及の過程にあります。また、FAME(Fatty Acid Methyl-Ester)、GTL(Gas To Liquid)やDME(Di-Methyl Ether)などが盛んに研究されています。

特にここ数年は直噴ディーゼルエンジンが、欧州の乗用車クラスにおいて大幅な販売シェアを伸ばしていますが、その要因は直噴ディーゼルエンジン本来の高熱効率・低燃費性に基づく経済性の高さとCO2排出量の低さであると考えられます。加えて、制御自由度の高いコモンレール式燃料噴射システムの開発及び改良によって、低燃費性能のさらなる向上、高トルク、高出力、低騒音化など商品としての魅力が一段と増したことも上げられます。

一方、燃料の側面から見てみますと低硫黄化が進んだことで、触媒を使用しやすい環境も整いつつあります。今後は、排出ガスによる環境負荷の低減や地球温暖化防止への対応など地球環境をより良くするために、今まで以上に、燃料とエンジンが強調した取組みが重要となるのではないでしょうか。ここでは"軽油ディーゼルエンジン"と"新燃料ディーゼル"の二つの視点で将来を見据えた議論をしたいと考えています。

●詳細情報 いすゞの自動車ディーゼルエンジンについて

編集部:急速なスピードで進化するクリーンディーゼルの現状と魅力をお話しいただけますか?



西村:
ディーゼルエンジンが発明されて以来、ディーゼルエンジンは常に魅力的なエンジンだったと思います。日本では,ライフスタイルの違いもあって,ディーゼル乗用車の普及は少ないですが,欧州ではご存知のとおりディーゼル乗用車の人気が非常に高いです。これはディーゼル乗用車の低燃費性に基づく経済性の高さとCO2排出量の低さであると考えられます。

欧州では日本では考えられないほどの長距離を1日で走るのが一般的ですので、欧州の人々がディーゼルエンジンの燃費の良さを実感できるからこそ,ディーゼル乗用車に対して根強い人気が集まっていると言えます。また,コモンレール式燃料噴射システムなどの高度な電子制御を用いた新しいディーゼルエンジン技術が開発されたことにより,低燃費性能のさらなる向上、高トルク、高出力、低騒音化など,ディーゼル自動車の商品としての魅力が一段と増していることもディーゼル乗用車の利用拡大の理由があると思います。

一方、日本でもトラックの分野では、ディーゼルトラックが圧倒的なシェアを誇っています。それは,欧州のディーゼル乗用車人気と同様に,何よりもディーゼル車の燃費の良さからの選択なのです。ご承知のように、価格競争が激しい運送業界において、燃料費の削減は収益を確保するための重要な課題の一つです。ですから,新しいトラックの車種をビジネスとして成立させるには、何といっても車両の価格と燃費の良さが求められますので,我々はそれに応えるべくディーゼル自動車の開発を行ってきました。

また、昨今の世の中の環境への意識の高まりから,ディーゼル車の排出ガス規制が強化されてきています。自動車メーカーとしては排ガス規制をクリアするべく車両開発に取り組んできていますが,今まで以上にクリーンなディーゼル自動車を開発するには、エンジン燃焼技術、排ガス後処理技術、燃料技術の3つの要素がしっかり噛み合うことが最重要となってくるのです。つまり,我々自動車メーカーのエンジン燃焼技術、それに排ガス後処理技術、そしてエネルギー業界の燃料技術を連携させることで、トータルな新しい自動車開発の設計プランを立てることができます。

現在、注目され始めている次世代新燃料として、私はDMEに大いなる期待をしています。DMEの着火性の良さ、基本的には燃料組成がDMEだけであるという燃料組成の安定性など、今までのディーゼル燃料である軽油にはない特性をDMEは持っています。DMEの特性に対応したエンジンの開発は必要でしたが、既にDMEを燃料とするディーゼルトラックなどの公道での走行も始まり、DME自動車の普及への道筋が見え始めています。

DMEはスーパークリーンディーゼルを実現する上で最適な燃料だと、私は考えています。これは私のシミュレーションですが、将来,DME燃料の本格的流通が始まれば,軽油ディーゼルトラックからDMEディーゼルトラックにかなりの割合で替わるのはないかと予測しています。それぐらいDME燃料とはディーゼルの世界を変える可能性のあるものなのです。
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