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先生、リサイクルが
環境に悪いって本当ですか!?


武田邦彦さん
芝浦工業大学工学部 材料工学科教授・学長事務代理


たけだくにひこ 
1943年東京生まれ。東京大学教養学部卒。芝浦工業大学材料工学科
教授。前、環境・情報材料センター長。工学博士。66年旭化成入社後、同社ウラン濃縮研究所長などをへて、現職。自己代謝材料の開発に取り組む。日本エネルギー学会賞、工学教育賞(倫理)受賞。主な著書に『分離のしくみ』『産学連携とその将来』や『「環境にやさしい商品」買っていいもの悪いもの』(監修)、『「リサイクル」してはいけない』『リサイクル汚染列島』などがある。


昨年刊行された武田邦彦教授の著書『「リサイクル」してはいけない』は、各マスコミで取り上げられ、大きな反響を呼びました。世の中は今、「リサイクルしましょう」が合言葉。世間の風潮に抗って、あえて「リサイクルしない社会」を説く、武田教授の真意はなんなのでしょうか。街中に建つ芝浦工大の一室でお話を伺いました。


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■リサイクルが環境に悪い理由(1)



――先生、単刀直入に伺います。なぜリサイクルはいけないのでしょうか。

リサイクルには、非常に大きな問題点が3つあります。
リサイクルというのはそもそも、一度使った資源をもう一度資源として使いたい、という希望ですね。ということは、使用後の物質が資源でなくてはならない。ところが、現在リサイクルがいわれている使用後の物質のほとんどは、資源ではありません。典型的なのがペットボトルです(ペットボトル1個が石油から作られるときのコストが約7.4円。リサイクルすると輸送費などの集荷に26円かかる。再生費用の1円と合わせるとリサイクルペットボトルの価格は27円程度で、新品の3倍)。使い終わったペットボトルは実は資源ではないということが、まず一つ目の問題点です。

物質には資源と資源でないものの2種類があります。簡単な例で説明してみましょう。仮に、非常に鉄分の多い小学校の校庭があるとします。小学生が地面に磁石を近づけると鉄分がたくさんくっついてくる。そこで、その校庭を掘り起こし、溶鉱炉に入れて鉄を造ろう、と考えます。そして、校庭中の鉄分を集めたら、なんとか鉄瓶ができた。あり得る話です。でも、これでは意味がないんです。なぜなら、鉄瓶をつくる鉄を集めるためにもっと多くの鉄を使うことになるからです。逆効果なんですね。つまり、校庭にあったのは鉄分ですが、資源としての鉄ではないのです。資源としての鉄は、鉄鉱石としてどこかの山にあるものだけです。こう申し上げると、「でもなぜ、鉄鉱石としてあるのは資源で、小学校の庭に鉄分としてあるのは資源ではないのか」と問われるかもしれません。その違いは対象物の「薄さ」なんですよ。

分離工学ではこんなことを言います。バケツの中に水を入れて、そこに赤インキを垂らしてしまうと、もう赤インキとしては諦めなくてはいけない。赤インキを薄めてしまったものから、赤インキを取り戻すことはできない、と。これは赤インキが「薄く」なっているからです。薄まれば薄まるほど資源としての価値は減ってきます。もし取り出そうとすれば、多くの費用や労力がかかります。

すると、環境のためならお金はいくらかかってもいいではないか、という声があがります。でも、それは間違いです。赤インキをバケツから取り戻すくらいだったら、新しく赤インキを作った方が環境にもずっといい。かかる費用も労力も資源もずっと少ないでしょう。

つまり、バケツの水に垂らした赤インキのように「薄い」ものは資源とは言えません。資源とはすべて自然によってつくられたもの。人間が最初から資源にしたものはないんです。


――自然がつくる資源だけが、資源として使えるものなのですね。

例えば、鉄鉱石は大昔、海水の中にある鉄分が、大体10億年くらいかけてどこかに固められたものですね。石油や石炭も、大昔の太陽の光が動物、植物を育て、それが浅瀬など一箇所に集まって死に、堆積したものです。

もし、人間が資源をつくることができれば、資源は枯渇しないでしょう。地球上にいくらでもできるわけですから。「資源が枯渇する」とは、単に物がなくなることではなく、人間が使い得る資源がなくなることなんです。そして、人間が使える資源とは何かというと「濃い」資源、固まっている資源なんです。

人間の誤りは、20世紀になって人類が突然偉くなったように錯覚してしまったことですね。何でも自分でできる、と思った。自分が資源だと思うものは資源に決まっているじゃないか、と。これがリサイクルの最初の間違いなんですよ。もう少し人間の心が謙虚だったら、私たちが資源にしようと思っているものは本当に資源なのか、という質問がなくてはならない。資源であれば資源として使える。資源でないものを資源として使うには無理がある。人間は今まで、自然が集めてくれた資源しか資源としては使っていないんです。逆に、人間がつくった資源を使うことができるならば、リサイクルは必要ありません。

リサイクルをしなきゃいけない、資源を大切にしなくちゃいけない、となぜ言われているかというと、自然が集めてくれたものがなくなりそうだからです。使用後に資源にできるもの、すなわちリサイクルできるものは、今のところ、私の計算では2種類しかない。屑鉄と、銅線です。

研究を始める前、私はアルミ缶もリサイクルできると思っていました。でも、計算するとアルミ缶は資源ではないんです。プルトップにマグネシウムやマンガン、チタンなどが付着していて、アルミとして再使用するのが難しい。結局リサイクルには不向きなのですね。

リサイクルが環境に悪いという一つ目の理由を一言で言えば、リサイクルが資源の再利用になっていないから、ということです。資源でないものを再利用するために、かえって多くの資源やエネルギーを使う、逆効果になっているんです。
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