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先生、リサイクルが環境に
悪いって本当ですか!?
武田邦彦さん
芝浦工業大学工学部材料工学科教授・学長事務代理


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ゴミをためておく「人工鉱山」

今、――ゴミを減らずためには、買う量を減らすというお考えはよく理解できます。ただ、出てしまったゴミはどうすればいいでしょう。

20億トンのものを入れたら、20億トンのゴミが出る。それはすべて焼かなくてはいけません。そして、ゴミ箱を作らなくてはならない。川崎製鉄の肩を持つわけではないけれど(笑)、ゴミ箱の作り方はサーモセレクトみたいな方法がいちばんいいですよ。それは量が減るから。なにしろ20億トンのものがゴミになって出てくるわけですから。

今、いちばん大切なことは焼いて量を減らす。日本のゴミは焼けば15分の1から20分の1の体積になる。ということは、現状でゴミの埋め立て地があと10年もつのならば、全部焼けば100年や200年もつ、ということになる。きちんと計算したら400年くらいもつでしょう。まずはそうした方がいいんです。入って来る量を減らすのが先決ではありますが、今からすぐ生活を10分の1に落とすというのは大変でしょう。だから、入って来る量に関しては、機運をつくりながら、みんなで長い間に少しずつ少しずつ倹約していけばいい。けれども、第一ステップとしてやるべきことは、20億トン出てくることを覚悟して、それを焼却し、できるだけ量を少なくしてとっておくことしかない。

――とっておくというのは、どのようにするのですか?

これが、私の提唱している「人工鉱山」です。山の中に焼却した灰を埋めるための箱をつくるわけです。ゴミを焼却した灰の中には鉄、銅、金などの有用な資源が入っていますので、人工鉱山に埋めておけば、資源のない日本では将来の資源の備えとなります。けれども、山の中に灰を埋めたら毒物が流れるじゃないかという批判もあります。でも、それは当たり前ですよね。ある程度は流れます。

日本には鉱山がないから、みなさん毒物が流れることに過敏になってしまいますが、もともと鉱山というのは汚いものなんですね。銅鉱山にはたくさんの硫黄が出てきます。銅を掘るときにもたくさんの毒物が出てくる。今、われわれはそれを全部外国に置いてきて、ピカピカした銅だけを持ち帰っているにすぎないのです。われわれは常に汚いものともいっしょに生活することを納得すべきですね。

結局、人工鉱山を置かざるを得ないんです。自分で使ったもののゴミだから、どうしても自分で始末するしかない。ゴミ箱を一番小さくするにはゴミを焼いて体積を減らす。焼いたものをためておく。海に捨てるわけにはいかないし、外国にもっていくわけにもいかないですから。日本人が使ったものだから、日本の中に置いておくしかないんですよ。買った以上は置いておかなくてはいけないんだ、と覚悟を決めなければなりません。

最近のゴミの特徴として建築廃材が増えていることが挙げられます。10年くらい前から、日本ではビルを建てるために古いビルを壊す必要が生じた。そうすると当然、ビルの廃材が出てくる。それを今までは海に埋め立てていたんです。でも、文句をいう人がいましてね、この頃は路盤材といって道路の表面にリサイクルとして敷いたほうがいいといわれるようになりました。廃材をリサイクルして舗装道路を作ったほうがいい、と。

それで、建築資材リサイクル法案というのができたんですよ。けれども、そのように道路を舗装していくと、6年で日本の平野からは土がなくなります。ゴミを「縦にためる」人と「横にためる」人がいたら、絶対縦にためたほうがいいんです。つまり、埋め立てです。路盤材にするということは横にためるということですね。それは、日本中をゴミで覆ってしまうだけのことです。

みなさんが「それがいい」というなら、それでもいいのでしょう。でも、私は嫌です。道路くらいは舗装されていてもいいけれど、全部コンクリートというのは、ちょっといただけない。山肌もなくなる。私だったら、どちらかといえば海に埋め立ててくれ、といいたい。われわれが使ったんだから、なんらかの処理をする必要があるのは否めません。その覚悟は不可欠です。そして、どちらかを選ぶのです。>>次のページ


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