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“千葉県”と聞いて、あなたはどんなイメージが浮びますか?
東京に隣接するこの県へのイメージは年齢やライフスタイルによってかなり違うのではないでしょうか?
開業以来、アジア最大のエンターテインメント&リゾートとして君臨しづける舞浜の≪ディズニーランド≫と話題の海浜施設≪ディズニー・シー≫、読者の中にも年間パスポートを更新されている熱烈なファンもきっと多いはず。そして日本最大の国際見本市会場、海浜幕張の幕張メッセ、最新技術や広範な知識収集が欠かせないビジネスマンにとってはメッセの年間プログラムは要チェックアイティムでしょう。そして日本と世界を繋ぐ空の玄関、成田空港、現在リニューアル中の第一空港ビルの完成はなんとも待ち遠しいところです。
いずれも首都・東京の機能を支える隣接県ならではの地の利とクオリティーのある施設が千葉には数多くあります。このように多彩な貌を持つ千葉県、今回は政令市でもある千葉市が取り組んでいる新しい都市再生総合整備事業をご紹介します。プロジェクトの名前は『蘇我特定地区都市再生総合整備事業』。このプロジェクトの核となる、都市型環境拠点づくりを目指す【蘇我エコロジーパーク構想】について、千葉市資源循環推進課の山田課長にお話を伺いました。取材にうかがったのは真夏の白い日差しが眩しい昼下がり、ぶ厚いファイルを手に市民や民間企業との重層的なコミュニケーションの大切さを語る山田課長、そのあくまでも前向きな姿勢は最後まで変わりませんでした。


■Part 1 21世紀のまちづくりの基本姿勢を支えるのは農耕型の発想回路

編集部:蘇我特定地区のまちづくりについて、まず概要をお話ししていただけますか?

山田: 喜んで! でもその前に、ちょっとこちらからも質問させていただいてもいいですか? 今日はここまでどんな交通機関でいらっしゃいましたか?

編集部:JR京葉線で来ました。地下鉄の八丁堀駅で乗り換えると千葉市役所のある千葉みなと駅まで小一時間、それからモノレールで一駅。予想外に早く到着したので、ちょっとびっくりしました。

山田:そうでしょう。千葉って聞くとなんとなく遠いイメージがあるようですが、都心からここまでの主要交通機関はJRで2ラインの京葉線と総武線、そして私鉄では京成も上野から千葉を縦断しています。その上整備された高速道路もありますし、東京湾を中心とした海浜エリアとして捉えれば、千葉は未来への発展が約束された立地なんです。特に、今回の都市再生総合整備事業の中心となる蘇我はこのJR京葉線のターミナルであると同時に内・外房線の結節点でもあり、東京と千葉を、またその先の房総と千葉中央を結ぶ重要な拠点でもあります。インフラの基本である公共交通機関を生かし、ここに“環境の世紀”に相応しい21世紀型の都市機能を再構築しようというのが今回のプロジェクトの主眼です。中でも、継続的な発展のベースとなる都市環境の維持を市では最重要課題と捉え、力を注いで取り組んでいるのが今回の取材対象「蘇我エコロジーパーク構想」なんです。

編集部:そのエコロジーパークには資源循環・エネルギーゾーンがあると伺ったのですが、詳しくお話いただけますか?

山田:まず基本構想の経過について、かいつまんでお話しさせていただけますか?蘇我には東日本を代表する旧川鉄の製鉄所(現JFEスチール(株)東日本製鉄所)があります。これが生産施設の更新に伴い、東工場用地(300ヘクタール)が遊休地化することとなったのは既に10年以上前です。この旧川崎製鉄(現JFEスチール(株))のリニューアル案が読売新聞に報道されたのが平成5年12月のことですから、社内ではさらに遡って検討されていたのではないかと想像します。この発表を受けて、市はこの跡地利用をより有意義な、かつ展望の開けるものにすべく平成6年度、「蘇我臨海部整備基本計画策定調査費」を確保して、積極的に調査を開始しました。“時代の風”を敏感に読みながら、この広大な敷地を将来に向かってどのように活用化すべきかという議論は、民間企業やさまざまな団体の方々にも当初から参加していただくべきだと考えたのです。“いきもの”である都市は、さまざまな場面で実際に活躍される方々の現実的なご指摘やご意見によってよりアクティブなものに育て上げられるものですからね。
こうした議論を通じて、まずは“まちづくりの目標”を次の4つの事柄にまとめることができました。

1

市街地と工場用地を一体化する整備を目指し、千葉の副都心にふさわしい都市拠点とすること。

2

エコロジーやリサイクル社会の実現に向けた新しい産業の集積に努めること。

3

市民が活動し、利用できる水辺空間や環境共生空間の確保をすると共に、市民生活の安全を確保できる防災空間を創出すること。

4

これらの実現と低・未利用地を積極的に活性化する道路や公園などの基盤整備をすること。


つまり、環境や自然と共生しながら、未来の市民の方々が安心してこの地で仕事をし、子供を育て、生活をエンジョイできる施設が整備された21世紀に求められる生活空間を作るあげるために、官民の壁を乗り越えて、双方の叡智を結集しようと考えたのです。

編集部:それにしてもずいぶん盛りだくさんな目標を掲げた計画ですね。質の高さと規模の大きさに正直驚いています。

山田:確かに欲張りなプロジェクトだと思います。でもこれからの時代は、それぞれの専門分野が別々の基準で動いていたのでは、解決できないことがいたずらに増えるばかりではないでしょうか? 多様なアイデアや現場での経験、ノウハウを踏まえ、包括的な解決に向かう努力を各専門分野が重ねない限り、健全な循環機能を有した都市は形成されないのではないかと思いますよ。

編集部:全国を見渡すと実に様々な都市開発計画が進んでいますが、正直なところ官と民の意識とはかなり違う点があるように見受けられます。それに巨大プロジェクトにつきものの完成後の維持・管理費などについてはどうようになっているのでしょうか?ご意見を伺えますか?

山田:巨大プロジェクトに対する市民の方々の心情は十分理解できます。ただ
蘇我プロジェクトならではの優位性、オリジナルな出発点があるとすれば、次のようなことを挙げることができます。まず、こうした開発計画の最大の問題である土地の確保が製鉄工場跡地という経緯から実にスムーズにできたこと。さらに、その企業が地元で長年事業をされてきた実績の裏付けから市民や行政との間にも篤い信頼関係もあり、蘇我の発展に真剣に望んでいる共通の志を持つパートナーであること、それは大きな優位性としてあげることができるのではないかと思います。
本プロジェクトは一過性の繁栄を狙った狩猟型の開発ではなく、きわめて農耕型、つまり今後の持続的な発展を重視したものなのです。
築かれた信頼をベースに、段階的に進展するまちづくりプランを早い時期からホームページ上でも公開し、市民やNPO団体などからの声を聞くシステム確立を念頭に動いてきました。


今年もこんな安心して生活ができる。そして10年後にも同じように子供たちが安心して遊びまわっている風景がここにある、そんな“まちづくり”を蘇我では実現したいのです。

編集部:“住み続ける理由がある”まちづくりというわけですね。
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▼PAGE2/“It's my town (私の街だ)という意識
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