石川英輔さんインタビュー:第2章

 

写真:石川英輔さん

 

そうは言っても、いわゆる『コンビニな暮らし』に慣れきってしまった私たちが江戸時代的な暮らしに戻ろうとしても、なかなか難しいのではないでしょうか?

日本風俗国絵

確かに今の時代は色々な意味で実に便利になった! 子供時代の私がもし、現代の日本にやってきたとして、この現実は夢のようでしょう。移動の手段も自家用車、電車、バス、地下鉄、飛行機、しかも行きたい場所まで予定した時間内で必ずたどり着けるような時代です。家には冷房、暖房が設置され、どんな家庭にも掃除機、洗濯機といった家電が整備され、スーパーに行けば世界中の食品が手に入る。一般庶民でもお金さえ払えば、ぜいたくな世界の珍味すら簡単に買えるご時勢です。まさに現代の日本は飽食を謳歌しているように私には見えます。でも、地球全体を見渡したらまだまだ飢餓に苦しんでいる人たちがたくさんいます。世界の人口が現在、60億人強、そのうち飢えに苦しむ人は約8億3000万人、つまり7人に1人がその日の糧に事欠き、飢えているということになります。僕自身、子供時代のことを思い出すと常にお腹が空いていたという記憶しかありません。長い行列に並び、やっとサツマイモを手にしたときの嬉しさは今でもはっきりと覚えています。

実は日本、しかも東京だってほんの50年前は、あらゆるモノが貴重だった。今のように簡単にモノを買い、使い捨てていく文化なんて存在しなかったと断言できます。着るものは季節ごとに手入れをし、大切に着ていたのです。たった50年、時計の針を逆方向に廻すだけで、この日本にもそんな生活と暮らしのスタイルがあったのです。僕は一方的に過去に戻れとは言っていない。まずは、“現実の地球に目を向け、自分ができることを自分の頭で考えてみませんか?” と申し上げているのです。 ゴミの分別やらリサイクルだのいう前に、自分の行動が本当に自分にとってよいことだと納得でき、かつ自分も快適に実行できる“エコ”とは何なのか? を、各人が自身に問い直し、納得した方法で、今の暮らしを見直すことが必要なんじゃないかと思っています。

 

具体的にはどうしたら良いのでしょうか?

日本風俗国絵

まず自分がそれを確実に、しかも無理なく実践でき、それが自分の身体にはもちろん、地球環境にもいい、なにしろ自分の身体は立派に地球環境の一部ですからね〜(笑)。そんなエコなライフスタイルを探し当ててはいかがでしょうか? 僕の場合はそれをさっさと見つけたので、この暮らしを“我が儘なエコ”という意味からの「エゴエコ」と命名し、日々、粛々と、かつ楽しく実行していますよ!

夏は暑い東京を離れ、冷房をかけずにすむ山荘に移り、そこで暮らす。冬は東京の自宅で過ごしますが、暖房は極力使わず、密閉度のいい部屋で、軽くて暖かな防寒用の衣料や寝具を使う。食事は体調管理上からも自分に合うことが分かった一日二食とし、菜食中心のメニューを自炊し、無駄なく食べる。食材の調達には、庭で野菜を育てているので、ここで収穫したナスや青菜を始め、都内や近隣の県産の食材を購入。つまり「エゴエコ」とは、“僕自身が自分の行動を丸ごと納得でき、しかも満足できる”、ライフスタイルです。
ところで「フードマイレージ」という指数をご存知ですか?

編:食品の移動にかかったエネルギー消費についても考慮するという発想ですね。

その通り! 食品そのものを栽培し、飼育する段階のエネルギー、さらに生産地から消費地までの輸送に関わるエネルギー消費についても数値として換算し、地球へのエネルギー負荷を考えようという視点のエコ指数です。僕の食品選別判断は、このフードマイレージを基準におかれています。同じような部類の食材だったら、なるべく東京都の近隣の食品を買うこと。野菜は東京、埼玉、千葉。お魚は千葉に神奈川、お米は茨城といった具合です。太平洋やユーラシア大陸を渡ってきたような食品は僕の買い物籠には絶対に入ってきませんね!