石川英輔さんインタビュー:第3章

 

写真:石川英輔さん

 

洞爺湖サミットでも「地球温暖化」をはじめ、環境関連の話題が討議されますが、世界全体、そして未来の世代に向かってのメッセージを伺えますか?

僕は政治的なメッセージの意味については疑問を持っています。なにしろエゴエコですから!(笑) ただ、こんなことがありました。ある場所で講演をした際、若い女性が最後の質疑応答の場面で、こんなことをおっしゃった。「先生のおっしゃることにとても感銘を受けました。このお話しを是非、現在急速に経済発展が進み、未来の環境への著しいダメージが予想される国々でして差し上げてください」と。そして僕はそのお嬢さんにこう答えました。「嬉しい感想、そして貴重な提言ありがとう。ただ、今まさに発展途上で、経済の豊かさの追求に想いが集中している人たちに向かって、省エネ、かつ一見“不便な今のくらし”を大切にしなさいといったとして、それを彼らが受け入れられる精神状態にあるだろうか? 現実問題として、18歳の頃の僕の前に、60年後の未来から来た君自身だと言って、爺の僕が若い僕に“自動車なんて不必要だ”と諭したところで、若い僕は決して60年後の現実やその後の変化を理解することなんて出来ず、未来からやってきた僕の言うことに耳を貸さないだろう」と。

 

省エネ関連の技術の研究や発展にはどのようお考えですか?

僕は新しい技術の開発やその普及には非常にポジティブに、かつ強い関心をもって見守っています。もちろん、一部にはどう考えても無駄としか見えないようなプランもありますが、中には拍手喝采を送りたいものもあります。例えばデジカメ、これは素晴らしい。印刷関係の仕事を生業としていたこともあり、銀塩写真とはずいぶん永く付き合ってきましたが、このデジタル写真というシステムは無駄がないと思います。というのも、ご承知のようにフィルムを製造する上で貴重な資源である銀が必要です。さらに現像の段階でも画像の定着剤として化学物質が使用されます。しかも、プリントにした後の整理の段階でも、デジタル写真はコンパクトな上に画像の確認もその場で出来、編集も簡単で、無駄なく楽しめる。しかも、誰もが高品質な画像が手軽に撮影できるんです。全く夢のようです。製版で写真にはずいぶん苦労させられたことが信じられません。ケミカルなものが電子記号に置き換えられると、物質的な無駄がなくなります。

デジカメ ハードディスク

 

石川英輔さん

とにかくここまで来たら、自分が自分の行動に責任をとりながら地球環境を汚さないライフスタイルを考え、それをしっかり実行する。そして大人たちはその姿を次ぎの世代を担う人たちに見せることも大切じゃないかと僕は思っています。また「エゴエコ」の薦めになっちゃいましたね。(笑)




(2008年6月4日、石川英輔さんのご自宅にてインタビュー取材)