〜命をいただく〜エコキッチン
2011年、廃校になった小川小学校下里分校。里山の穏やかな自然となんとも懐かしい木造校舎の景観は地元だけでなく東京など近隣から訪れる人々にも愛されてきました。2018年4月、分校の用務員棟が「カフェ&移住サポートセンター」としてリノベーションされ、新たな出発をすることになり、翌年からカフェMOZARTの店長となった有賀さん。地元のオーガニック野菜をふんだんに使った身体が喜ぶランチとお弁当を提供しています。
近年、世界中で新たな食習慣として定着しつつある「お弁当文化」。目に美しく、食欲がそそるだけだなく、健康な身体をつくる“食の喜び”を「お弁当」に託してご紹介します。
フードスタイリスト | グラフィックデザイナー | 分校カフェ MOZART プロデュース・運営
1975年、長野県辰野町生まれ。桑沢デザイン研究所リビングデザイン科卒業。グラフィックデザイン、フードスタイリング、ケータリングの仕事を続ける傍ら、有機農家とともに食農体験教室「畑のがっこう」を立ち上げたことをきっかけに、2020年、埼玉県小川町へ移住。小川町は、有機農業の取り組みが全国でもトップクラスを誇り、「有機の里」として知られる町。現在は、日本の有機農業を牽引してきた「霜里農場」の隣にある廃校を活用した分校カフェ MOZARTを経営し、地域で育った有機野菜や米をふんだんに使ったランチやお弁当を提供している。また、埼玉県立小川高等学校の学食も運営している。
畑から食卓までのつながりを大切に、地域の恵みを生かした料理を通して、季節の移ろいや自然とともにある暮らしの豊かさを発信している。
イラスト|太田有香 ©Yuka OHTA
今回は、家から車で10分ほどの渓谷へ、お弁当を持って出かけました。
夏になると、何度も訪れたくなるお気に入りの場所です。
着いたらまず始まるのは、「今日はどこで食べようか」と特等席を探す時間です。
木漏れ日が差し込む場所、川のせせらぎが心地よく聞こえる場所、風が気持ちよく通り抜ける木陰。その日の景色を選ぶことも、お弁当時間の楽しみのひとつです。
子どもは木の根っこを椅子に、大きな平らな石をテーブルに見立てて、自分だけの食卓をつくります。今回は見晴らしのいい大きな岩が、私たちにとっての特等席になりました。
お弁当箱に詰めるのは、私のこれまでの暮らしをつないでくれる味。
母がよく握ってくれた味噌おむすび。甘辛く香ばしい味噌の香りは、今でも私の心をふっと子どもの頃へ連れて行ってくれます。
蕎麦稲荷は、暑い夏でもするりと食べられる、わが家の定番。蕎麦に特別な味付けは必要ありません。甘辛く煮た油揚げの煮汁が蕎麦によくなじみ、ねぎを散らすだけでも十分おいしくいただけます。錦糸卵や季節の野菜を添えれば、おもてなしにも喜ばれる一品になります。
そして埼玉へ移住してから農家さんに教わった野草「スベリヒユ*」。厄介な雑草だと思っていたものが、実は昔から各地で食べ継がれてきた栄養豊かな野草だと知りました。しゃきしゃきとした歯ごたえとやさしいぬめりと酸味が心地よく、今では娘の大好物に。夏になると食卓に欠かせない季節の味になっています。