食材ラボいのちを育てて
©︎ SHIOHARA Masumi
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果実づくりでは、味にはまったく問題がなくても、形が少し不ぞろいだったり、表面に傷がついたりして、生果としての販売では選別されてしまう規格外がどうしても出てしまいます。
しかし、果実のいのちを育てるために、私たち栽培者は、初冬には剪定、真冬は寒さから守る手当をし、春には花の状態を見ながら受粉や摘果を行い、その後も枝や葉、果実の様子を見ながら、病害虫にも気を配る日々を過ごします。こうして何ヶ月も手塩にかけた果実が、収穫という晴れの日をようやく迎えるのです。
そこまで手をかけて育てた果実たちの一部が見た目だけの理由で規格外となり、無駄になってしまうことは、私にはなんとももったいなく、残念でなりませんでした。
そこで私の農園では、20年以上前からあんず、すもも、プルーン、りんごなどを使いジュースやジャム、ゼリー飲料などの加工品を作っています。加工製造は信頼する外部の専門会社に委託し、農園で直販しています。
ジャムは果実にグラニュー糖とレモン果汁を加え、果肉をつぶし過ぎず、少し大きめにカットした果肉を使い、食べたときに果物そのものを感じられる食感に調整しています。レモン果汁はジャムの仕上がりを整えるために加えますが、味の中心にあるのは、あくまでも果実そのものの甘み、酸味、香り、この三つです。
加工することで、生で食べたときとは一味違う魅力や美味しさが引き出される果実たち。あんずにはあんず特有の酸味が、すももにはすもも固有の色や酸味が生まれます。プルーンには後味の良いしっかりとした甘みが、りんごたちには品種毎の微妙な甘さや香りの差があることに気付かされます。
私にとって加工品づくりは、単に「余った果実を使う」ということではないのです。
それぞれの果実が元々、持っている個性豊かな甘み、酸味、香りを加工によって引き出すクリエーションです。
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生果として販売するまでに美しく育つことが出来た“いのち”もあれば、味や香りには全く問題がなくても、少しばかりの傷や不都合が生じた “いのち”もたくさんあります。それならば、それぞれの “果実のいのち”に合った味わい方を考え、その“いのち”を存分に生かす方法を編み出せばいいと私は考えています。
何故なら「いのちを育てること」を生業とする私にとって、どちらも等しく愛おしい果実たちに変わりはないからです。
加工品のラベルは、私が撮影した写真を使用しています。日夜農園で育ててきた果実たちを収穫し、手作りのスタジオでその肖像を撮影し、その写真でラベルを制作する。加工品づくりは、私のふたつの仕事がひとつに繋がるステージでもあるのです。それぞれの瓶の中身がどれほど美味しいのかを自分の写真で視覚的にも伝えたいと願っています。
「もったいない」という言葉は、ただ捨てないという意味ではないはずです。十分に価値のあるものをしっかり見極め、それに合った方法で生かしきることではないでしょうか。
果実という“いのちを育てる”農園での一年、それは、果実が実るまでに何度も畑に入り、個々のいのちに寄り添う日々です。空を仰ぎ、土を踏み、木や枝を見て、葉に触れ、果実の生育を確認しながら、その時々に必要な作業を適切に続ける…。だからこそ、収穫した果実はできる限り大切に扱い、最後まで美味しく味わっていただきたいと思うのです。
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