見出し:第四部

 

調査取材日:2007年8月11日(土)9:00〜12:00
調査場所 :JFEエンジニアリング株式会社 鶴見事業所
参加者  :環境生態研究会:1名 (田口仁志さん)
      横浜にとんぼを育てる会メンバー:2名(吉井さん・鹿島さん)
      JFEエンジアリング:2名 (柴田さん・相馬さん)
      編集部:3名 (太田・外川・岡山)

 

8:30AM JR鶴見線・浅野駅

JR鶴見線は、浅野総一郎が京浜臨海部の貨物線として敷設したのがはじまり。いまでは、京浜臨海部に勤務する人たちの足として活躍しているローカル線です。 それぞれの工場正門近くに位置する無人駅、工場内に引き込まれた支線、この鶴見線、実は鉄道ファンの中では非常に有名な路線です。鶴見線ならではの車両と趣のある駅構えが鉄道ファンにとってはたまらない魅力なのでしょう。

早朝から照りつける真夏の太陽は線路をじりじりと熱し、まだ8時過ぎだというのに、照り返しから線路の上にはゆらゆらと陽炎が見えるほど、今日も確実に猛暑日になりそうです。帽子に長袖、それに水筒で重装備した編集部はちょっと早めに待ち合わせ場所、浅野駅・改札口に到着。既に駅ではJFEエンジニアリングの相馬さんが迎えに出てくださっていました。

 

8:40AM

本日の調査を指導してくださる環境生態研究会の田口仁志さん始め、ボランティアとして調査に参加してくださる「横浜にとんぼを育てる会」のメンバーの皆さんも定刻に集合。早速、JFEエンジニアリング樺゚見事業所内にある水槽まで、昆虫採集の網を片手に歩き出しました。日陰を探しながら歩くこと8分、こんもり茂った森が背後に控える鉄製の水槽のある現場に到着。

写真:「横浜にとんぼを育てる会」のメンバーの皆さん 写真:網

さて、今回の調査場所の水槽はもともと放電用の水槽として建設されたもので、約10m×20m四方の鋼鉄製。ビオトープを意識して作られたものではありません。ただ既に稼動を停止しているため、水槽を覗き込むと、植物やミズカマキリ、アメンボなどの昆虫が自然に生息しているのが見て取れます。さらに周辺は工場緑地として植えられた植栽が見事に育ち、高さ20メートルのこんもりとした「森」を形成し、生物たちには格好の日陰や隠れ場所を提供していることに気づかされます。

写真:「横浜にとんぼを育てる会」のメンバーの皆さん

調査時間は9:00から12:00までのジャスト3時間、調査場所は水槽を取り囲むフェンス内を厳守することなどの基本説明、引き続いて昆虫網のチェックや調査方法の手順、昨日の実績報告などの引継ぎを受けます。今年は梅雨明けがずれ込んだ影響もあり、トンボの成長が若干遅れている印象が見受けられるとのこと。昨日捕獲されたトンボは残念ながら2頭**、ただ編集部としてはたくさんのトンボの姿をここで見たいというのが偽らざる本音。トンボさん、どうか水槽に向かって飛んできてください!

 

9:00AM

いよいよ調査開始!太陽の光はますます強くなり、それに比例するかのように油蝉の声の勢いが増してきます。

 

9:47AM

写真:水まき

トンボたちは水槽の上空で飛んでいるものの、なかなか水槽近くまで降りてきてくれません。「水を撒いて水溜りをつくるとトンボが降りてくることがあった」という鹿島さんの提案をもとに、周囲の木立から水槽に通じるエリアを重点的にホースで勢いよく散水開始。“水撒き”効果に期待がかかります。

 

9:50AM

“水撒き”を待っていたかのようにこの日最初のトンボ捕獲に成功! 田口さんの素早い網さばきにかかったのはシオカラトンボのメス。まずはトンボの羽を破損しないように慎重に捕獲網からトンボを取り出します。羽の根元を指で軽く押さえ、種類、雌雄、成熟度の確認、羽の破損状況など、シートの項目に沿って順々に観察します。

そして一連の調査の最後に、トンボの羽に4桁の調査ナンバーを油性のマジックで書き込み、これで調査は全て完了です。それに要する時間は約5分、その間、捕獲されたトンボは最初こそバタバタと暴れますが、そのうち暴れ疲れたのか、おとなしくされるがまま状態です。羽から指を離し、自由に飛べるようにした後もトンボは、しばらくは私たちの指先に止まっています。そして2、3分も経ったころ、前触れもなくふわっと飛び立っていきました。同時に調査隊一同からもふーっと息が漏れます。これぞ、まさに呼吸が合った安堵の瞬間です。

写真:とんぼ 写真:とんぼ
写真:とんぼ 写真:とんぼ

 

その後も水撒き効果は絶大だったようで、森から水槽に向かう小道周辺で、その日は全部で6頭のトンボが捕獲されました。調査隊のメンバーがほぼ全員捕獲に成功するというペース。それぞれの羽に調査番号がナンバリングされて、6頭のトンボは夏空に再び飛び立っていきました。

9:50AM  シオカラトンボ
10:34AM シオカラトンボ
10:39AM ショウジョウトンボ
10:41AM ウスバキトンボ
11:30AM オオシオカラトンボ
11:57AM シオカラトンボ

最後の最後まで諦めないという姿勢は、仕事にも調査にも通じるものかもしれません。この日のJFEの水槽で捕獲されたトンボは4種6頭、なかなかの成果を上げることができました! 皆様本当にお疲れ様でした!


**トンボを数える際には“匹”という語が一般的ですが、研究者・専門家による学術的な場において“頭”と数える習慣があることから、文中においては“頭”という表現を用いました。