第二回
ヒトはどこへ向かう?


2026.07.31


世界の人口は過去2度にわたって「拡大・成長」と、それに続く「成熟・定常化」を繰り返してきた。そして「成熟・定常化」の時代に入ると、文化的な価値観が醸成されるという歴史をもつ。 

我々ホモサピエンスは20万年前に発生し、狩猟採集文明の中で、突然のように5万年前頃には服を身につけ、洞窟壁画などの文化を残すようになる。詳細は不明な部分もあるが、人口は順調に増えていたものの、7万4,000年前にインドネシアのスマトラ島にあるトバ火山が大噴火を起こし、それが地球全体の気候を大きく変えた。

地球の平均気温は5℃も下がり、人類は絶滅の危機に瀕していた。全世界の人類の数は2000人ほどまでに減少したと考えられている。この厳しい環境の中で脳の突然変異が起こり、ヒトは複雑な言語を話せるようになり、未来を考えることができるようになった。そして5万年前の文化的価値を生み出したのだ(心のビッグバン)。

これに続いて、1万年前ほどから発達したのが農耕文明である。これも過度な森林や農地の開発と人口増加が進んだ結果として、森林の枯渇や土壌の浸食などが深刻な形で進み、農耕文明に大きな陰りが出てきたとき、ヤスパースの言う枢軸時代が始まった。

紀元前5世紀ごろ、中国では儒教や老荘思想、インドでは仏教、ギリシャ哲学、中東の旧約思想が世界同時多発的に生まれた。それは拡大成長という物質的な欲望を超えた、内なる価値の探求、例えば「人間とはなにか」という哲学、あるいは倫理的な価値の探求が始まったのだ。狩猟採集、農耕社会ともに、環境制約の中で、物質的な量的拡大から精神的・文化的な発展という、新たな方向性を導く思想が生まれたといえるのだろう。

では、農耕文明に続く工業化文明はどうか? 

イギリスでの産業革命以降、自然の搾取とその加工による再分配が急激に拡大し、資本主義が生まれ、経済成長が唯一の成長の証として走り続けた結果、資源は枯渇し、深刻な地球環境問題を生み出した。それでも搾取をやめることができず、極右化、自国第一主義に傾倒した結果、あちこちで紛争が拡大している。 

3度目の文化的な価値観が醸成されるとしたら・・・ 
それは自然と人間の境界をつくらないアニミズム的な価値ではないのか? 

とすると、新しい文化的な価値創成は日本から始まるのでは・・・

©︎ YAMADA Yuki