~地球の声に耳を傾ける~
エコピープル

2025年晩秋号 Ecopeople 106
ビオトープ知多の挑戦

Part 3

編集部
ところでビオトープの日々の作業はどなたが担当されているのですか?

小原
定期的に造園屋さんにお世話になっていますが、基本的には総務部所属の社員が担当しています。中川さん、小林さんをご紹介します。
編集部
実は先ほど、ビオトープエリアをご案内いただき、少し驚いたのですが、スプリンクラーが見当たりませんでした。昨年7月の写真では地面が赤く露出しているエリアがすっかりクローバーなどが生える青々とした草地になっていたので、びっくりしました。 この夏の異常な酷暑を乗り切るには、日陰がまだほとんどない新規造成エリアには大量の散水が必要だったのではないでしょうか? 一体、どのように対処されたのですか?

中川
特に今年の暑さは尋常ではなく、地面はあっと言う前にカラカラになってしまいました。製造所には非常時用に対応する消防車を保持しているのですが、その消防車のホースで、週に何回も散水を実施しました。
さらに、水撒きが定期的に実施されることで生える雑草の草取りも大仕事でした。この夏は、まさに酷暑と闘う日々でした。
編集部
ビオトープには知多半島独自の貴重な在来種の草が移植されていると伺いました。 草取りは、植物についての学習をされての作業だったのではないでしょうか?

小林
シラタマホシクサなどは、環境省が絶滅危惧種に指定していますし、近隣の阿久比町から特別に分けていただいたものです。植物については担当者全員が事前に学習しての作業でした。


編集部
そうした多くのご苦労あってのことですが、鳥類や昆虫、小川に棲む生物などは現在、どのような状況になっていますか?

小林
定期的に専門家にモニタリングをお願いしているのですが、飛来する鳥類は約15種類、昆虫などの生物が80種余り、明らかに増加傾向にあります。
編集部
水田での稲作は今年で2年目とのことですが、これはどうされているのですか?

中川
米作りについては完全に半田農業高校の高校生が一貫して管理しており、私たちは見守るだけです。米作りについて言えば、初年度の方が生育もよく、収穫量も多かったように思います。今年は、ここに水田があることを知った生き物たちが収穫前のお米を狙って集まっていたようです。さらに台風などの悪天候に対応して、刈り取り時期を早めたりしていました。







編集部
米作りについては、高校生たちが文字通り、全責任を持って取り組んでいるのですね。

中川
米作りという作業を通して、高校生たちが徐々に頼もしく成長していることを見れることは本当に嬉しい気持ちになります。最初は自信なさげだった若者たちが稲刈りイベントの頃には、自分の意見や考えを持ち、イべントを企画し、参加親子に的確な指導をしながらも和気あいあいと作業する姿を見ていると、“親心”に通じる温かな気持ちになります。
編集部
こうして次第に整備が進み、地元の皆さまにも認知が広まる中、『ビオトープ知多』を今後、どのように発展させてゆきたいと思われますか?

小林
現在も限られた条件下ではありますが、半田農業高校の皆さんの“学びの場”としてご一緒させていただいていますが、将来的には広く一般の方々も訪れることができるビオトープとして解放されるようになれば、本当に素晴らしいと思います。
知多半島の穏やかな丘陵が生み出す水辺に池、竹林、木陰のある緑豊かな「生物群集の生息空間=ビオトープ」として多くの方々に愛される場所になることを願っています。
中川
ここでは巣箱を置いたら、自然に日本蜜蜂が巣を作ってくれたのですが、間伐材を積んだ場所がカブトムシの棲家になり、さまざまな蝶や昆虫、鳥たちが飛来する自然公園のような場所になり、ビオトープとして多くの生物を育む日がやって来ることを祈って、これからもしっかり保全をして行きたいと思っています。