1997年、名古屋大学大学院 農学研究科修了。博士(農学)。日本学術振興会特別研究員、日本福祉大学健康科学部長、副学長、執行役員を経て現職。専門分野は森林保護学、環境工学。03年、日本林学会賞受賞、22年、愛知県環境保全功労者表彰。
編集部|
2023年、開設80周年を迎えたJFEスチール知多製造所の記念事業として位置づけられた工場敷地内のビオトープ創造。先生は計画当初から、本プロジェクトについて相談を受けられたと伺いました。どのような印象をお持ちになりました?
福田|
鉄鋼業は日本の産業を支える重要な基幹産業ではありますが、同時にCO2の排出量が多い産業であることは誰もが認知していることです。
知多半島でも有数の規模を誇るJFEスチールが、その工場内に自然と共生し、生物多様性を育む場となる、2ヘクタールという前例のないほど大規模なビオトープを計画していると伺い、正直、驚きました。
ただ、同社が推進している「ゼロカーボン戦略」を地域社会と協働し、推し進めたいという強い意思を持っての決断であることを感じ、積極的に協力することにしました。
編集部|
その大きな決断をさせたポイントをお聞かせいただけますか?
福田|
まず知多製造所は、以前より工場内にホタルの生息地となる水辺、竹林などを整備するなど、生物多様性推進活動への実績を持ち、地域との連携についても柔軟かつ積極的あることは存じておりました。そして何よりも、JFEスチール担当者の本気度です。
メンバーの中には専門の資格(ビオトープ管理士)まで取得される方なども出てきて、共同研究中もその熱意と意識の高さに、私たちも大いに刺激を受けました。
実現にあたっては、まずは大学が推進してきた文部科学省の「COC」(*)事業の後継事業である地域連携研究事業で研究資金を獲得し、研究を正式にスタートさせました。JFEスチール社員の皆さんには、市民研究員として研究に参加していただき、議論を重ね、軌道修正をしていくことができれば、高い成果が期待できると確信しました。
*「COC」事業
文部科学省が国内の大学を対象として、「地域社会との連携強化による地域の課題解決」や「地域振興策の立案・実施を視野に入れた取り組み」をバックアップする施策。"COC"は"Center of Community"の頭文字を取った略語で、「地(知)の拠点整備事業」とも称される。2013年度より開始された。
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/05/20/1346067_03.pdf
編集部|
地域連携研究事業申請にあたって、研究テーマに掲げた「ビオトープ知多」への提案内容をお聞かせください。
福田|
開設80周年記念事業として創造された「ビオトープ知多」ですが、私たちはさらに20年後の2043年をゴールに設定し、JFE知多製造所100周年に向けた『未来のビオトープ』を提案することにしました。
何事も「産み出すこと」も大変ですが、それを「育てること」はさらに大変な事業です。
20年という時間を明示し、次なるゴールに向け、2ヘクタールのビオトープを手塩をかけて育て上げ、着実に進化・発展させていく。そんな『ビオトープ知多』プランを提案させていただきました。
現時点では、全国に展開されるJFEスチールの工場内で、ビオトープが造成されているのは知多製造所だけですが、ここでの実績が評価され、将来はゼロカーボン時代を象徴するモデルケースとして、全国へと波及していくことを願い、計画を練り上げました。