編集部|
本年度の「eco Gallery」のナビゲーターとして、初回となった7月号ではハワイを舞台とする作品を提案されましたが、ハワイには特別の想いがおありなのですか?
高砂|
僕は自然の風景やそこで生息する生きものたちを撮影してきました。若い頃は取材が決まると、事前も現地でも、“いい写真”を撮るために必要な情報の入手には熱心でしたが、現地の文化や人々の日常生活を深堀りすることはあまりありませんでした。
ただ、先ほどお話ししたように、遠く離れた陸地に住む人間たちの都合が、“いのちのゆりかご”である海に取り返しがつかないダメージを与えた事実を知って以来、現地に着くと、まずその地に住んでいるファーストネーションである原住民の長に話を聞くことを大切にするようになりました。何故なら、彼らはその地の美しい自然や風景を守ってきた人たちだからです。過去から現在、そして未来へと自然界の“いのちの循環と生きものたちの共生のメカニズム”を受け継ぐ智慧と作法を熟知するメンターなのです。彼ら、彼女らの話を聞くことで、写真に写すべき“大切なこと”を考え、感じられるようになってきました。
編集部|
ハワイでのメンターとの出会い、そのポイントについて伺えますか?
高砂|
一言で言えば、ハワイ語の「ALOHA」に込められた広い愛、「ALOHA SPIRIT」。
「ALOHA」とは、思いやり、調和、柔軟性、謙虚さ、忍耐で表現される「他者や違いを受け入れる」穏やかな生き方を教えるスピリットです。
『ONENESS by TAKASAGO Junji』
僕のメンター、カイポ・カネアクアは僕に色々な話をしてくれましたが、地球上の全ての生きものの中で唯一、ある種の知恵と自分の意思で生きられる人間だからこそ、それらの生きもののひとつとして謙虚に、やるべきことを考え、行動し、豊かな感受性を持って自然と共に生きることの大切さを平易な言葉で説いてくれました。
人間は、さまざまな困難や苦しい状況を打開するための知能を持ち、力を合わせて行動することが出来、さらに芝居や映画、音楽や文学などのアート表現(CREATION)に感動し、喜んだり、悲しんだり、涙を流す豊かな感情を持っています。
よって、僕達は多くの生きものたちの“一番年上の兄のような存在”として、地球上のさまざまな動植物、変化する気象現象に心を寄せ、循環を促し、相互作用によって生じる効用や影響に思いを馳せ、調和を目指して生きることが平和への道のりになると話してくれました。
“あたりまえなこと”だと言えば、それまでですが、現在の世界情勢を見渡すと、それが、ますます出来なくなっているように感じます。周りの自然と“ひと繋がりな存在”として暮らしてきた感覚が失われ、自然は自然、人間は人間といった具合に、周りとの関係性を感じる感性が稀有になってしまっているように感じます。
編集部|
世界100ヶ国以上を訪れた高砂さんが、地球の不思議、自然の奥深さを体感する上で、推薦するベスト・デスティネーションを上げるとしたら、何処でしょう?
高砂|
最近、日本にもとても惹かれていますが、僕が長く心を惹かれ通い続けてきたのはハワイ群島です。ハワイは、その知名度から多くの人が地図の上でその場所を示すことも、イメージを浮かべることも出来ますが、その奥深さについてはほとんどご存じないと思います。
編集部|
確かに…。誰もが思い浮かべるのは、太平洋のど真ん中にある小さな島、そして青い海とビーチ、豪華なリゾートの絵柄だと思います。
高砂|
8つの島からなるハワイ群島は、多様な生態系や地球の息吹を体感できる世界でも稀な場所です。ハワイ島のマウナケア山 (標高4,205m) は富士山より高く、冬季は積雪が観測されますが、キラウエア火山では活発な火山活動を続け、真っ赤な溶岩流を間近で見ることができます。さらに、太平洋の真ん中に位置する地理的隔絶はユニークな自然環境を生み出しているおかげで、多様な植物や動物の固有種が生息し、姿を消しつつある多くの絶滅危惧種はアメリカ本土より多いのです。
ハワイの人口に占めるネイティブ・ハワイアンの割合はポリネシア系を含めても約一割、明らかにマイノリティーです。多くの移住者を受け入れてきた多民族社会のハワイですが、ALOHAスピリットは住民たちによって堅持され、稀有なる自然環境が保たれているんです。